ファイナンス 2020年12月号 No.661
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図2 金利水準とデュレーションの関係低い金利高い金利金利が高い時、傾きは大きくデュレーションは大きい。金利が低い時、傾きは小さくデュレーションは小さい。利回り価格デュレーションを金利が変化した時の「債券価格の変化」とするならば、コンベクシティとは金利が変化した際の「デュレーションの変化」です。このようにデュレーションは金利の水準に依存するため、コンベクシティを有する国債は、金利が大きく上昇した時は、金利が上昇する過程でデュレーションが徐々に低下する効果が発生します。金利が上昇する中で、コンベクシティがあることにより徐々にリスク量が低下していくことになりますから、コンベクシティはいわば価格低下のクッションとして働きます。その一方、金利が低下した時はデュレーションが大きくなる効果があるため、金利低下に伴う価格上昇はより大きくなります。このように金利が上がっても、下がってもコンベクシティは国債のロングの投資家にとってプラスに働くと解釈することもできます*3。ちなみに、国債など大部分の債券はこのような性質を有しますが、債券の中には金利が上がる(下がる)と逆に、デュレーションが上がる(下がる)ものもあります。このような債券は負(ネガティブ)のコンベクシティを持ちます。ネガティブ・コンベクシティについてはBOX 1を参照してください。2.2  なぜ債券にはコンベクシティがあるか:債券価格のゼロフロアを使った説明債券のテキストではコンベクシティはこのくらいの説明で終わることが通常です。ここから、なぜそもそも債券にはコンベクシティがあるのかを考えていきたいと思います。債券市場に携わると必ずコンベクシ*3) ぺデルセン(2019)でも、「ロングの投資では、利回りが変化する際に大きなコンべクシティであることが望ましい」(p.346)と記載しています。ティという概念に触れるのですが、実はなかなか直感的に理解しにくい概念です。筆者もこの原稿を記載するにあたり、多くの実務家と会話しましたが、債券にコンベクシティがあることを直感的に説明することが容易ではないことに改め気づかされました。よくある説明は、債券価格が0円以下にはならないことに着目したものです。もし仮に図3のように金利と価格は線形の関係にあり、コンベクシティがなかったとしましょう。この場合、金利が上昇するにつれ、いつか価格が0円以下になってしまいます。しかし、価格がマイナスになるとは、お金をもらって利回りを生む債券を購入できることを意味するため、これは現実的ではありません。このことを考えると、金利が上がるにつれて傾きが低下していく(つまりデュレーションが低下していく)効果が生まれる必要があり、これが金利と価格の非線形の関係を生み出します。このように解釈すれば、債券価格には0円というフロアのオプションがあることがコンベクシティという価値を生んでいると解釈することができます。これはコンベクシティがないと矛盾が出ることを示すといういわば背理法のような説明です。図3 金利水準とデュレーションの関係(コンベクシティがなかった場合)利回り価格債券価格と利回りが仮に完全に線形の関係であれば債券価格がマイナスになってしまう2.3  なぜ債券にはコンベクシティがあるか:割り引くこととコンベクシティの関係これで納得される読者もいるでしょうが、ここではもう少し直接的にコンベクシティを考えるため、次のようなケースを考えてみましょう。例えば、私(筆68 ファイナンス 2020 Dec.連載日本経済を 考える

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