ファイナンス 2020年12月号 No.661
71/98

2.コンベクシティとは2.1  金利が変化した時のデュレーションの変化これまでデュレーションやDV01など微小な変化に伴う金利リスクを考えてきました。もっとも、金利が大きく変化した場合の価格の変化を算出しなければならない時も少なくありません。例えば、バーゼル規制による銀行勘定の金利リスクの計測では円金利が100bps(=1%)上昇した場合の損失量を算出することが要請されています。この場合、DV01で1bps動いた時のリスク量が算出できることを考え、DV01を100倍することで、100bps金利が上昇した場合の損失量を考えることが一案です。もっとも、注意すべきことは、服部(2020c)で記載したとおり、DV01は微小な金利の変化で定義されており、実は金利が大幅に上昇した際の価格変化は単純にDV01を比例させた値にならない点です*2。冒頭で強調しましたが、デュレーションの大きさは金利水準の大きさに依存します。すなわち、同じクーポンと償還をもつ債券であっても、金利が3%ついている世界と1%ついている世界では、デュレーションの値そのものが変わるのです。結論を先にいえば、金利が高い水準にあればデュレーションは(相対的に)低い値をとりますし、金利が逆に低い水準にあれば、デュレーションは(相対的に)高い値をとります。図1は縦軸に国債の価格、横軸に利回りをとることで、国債価格と金利の関係を示しています。デュレー*2) 銀行の場合、保有している債券の年限が短く、コンベクシティが小さいこともあり、実務的にはDV01や1BPVを100倍した値が用いられることも少なくありません。ションは左下図のように金利と価格の間に線形の関係があると想定した概念です。デュレーションは前述のとおり、金利が動いた時の価格変化率でしたから、この傾きが金利感応度(デュレーション)に相当します。左図の場合、金利がどのような水準でもその傾きは一定ですからデュレーションは金利の水準に依存していないと想定しています。例えば、服部(2020c)で記載したとおり、現在の10年国債のデュレーションは9.8程度です。デュレーションは金利の微小の変化に伴う価格の変化率でしたから、たとえば1bps(=0.01%)金利が上昇すると、価格は0.098%低下することになります。仮に金利と価格の関係が左図のような形であれば、100bps(=1%)の金利上昇の場合、国債の価格は9.8%(1bpsの金利上昇の100倍に相当)低下することになります。デュレーションのみをもちいて金利感応度を計算した場合、いわば、左図のような線形の関係を想定してリスク量を算出していることになるわけです。しかし、実際の金利と価格の関係はこのような直線(線形)の関係ではなく、図1の右側のようにカーブを描きます。これをカーブの曲がり具合を表す概念を用いて「コンベクシティ」と表現します。このように金利と価格の間に下に凸の関係性がある場合、図2に記載しているとおり、金利が低い場合、傾きは大きいためデュレーションは相対的に高い一方、金利が高い場合は傾きが小さいため、デュレーションは相対的に小さくなります。図1 デュレーションとコンベクシティの関係利回り価格利回り価格デュレーションで想定している金利変化と価格の関係コンベクシティ大コンベクシティ小実際の金利変化と価格の関係 ファイナンス 2020 Dec.67シリーズ 日本経済を考える 107連載日本経済を 考える

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る