ファイナンス 2020年12月号 No.661
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コラム 経済トレンド78大臣官房総合政策課 調査員 志水 真人/髙根 孝次農業の動向と収益性の向上本稿では、近年の農業の動向を調査し、農業の収益性向上についての可能性を考察する。農業の現状・日本の農業就業人口は、生産年齢人口の減少を上回るペースでの減少が続いている(図表1)。・新規就農者へのアンケート調査によると、現状の経営課題としては「所得・収益の確保」が最多となっており、収益の確保が難しいことが担い手不足の一因となっている可能性が考えられる(図表2)。・実際に、毎月勤労統計における一般労働者の年間給与総額と農業経営統計における個別農家の1経営体あたりの所得を比較すると、農業所得は現金給与総額の全産業平均を下回っている(図表3)。今後も担い手の減少が続く可能性があるため、農業の収益性を高める必要があると考えられる。図表1 農業就業人口の推移▲20▲15▲10▲50510151005200095(注)前期比は5年前と比較した数値1990(前期比、%)総農家数生産年齢人口図表2 新規就農者が抱える現状の経営課題(2018年)所得・収益の確保労働力の不足設備投資資金の不足技術の習得・工場運転資金の不足50%40%30%20%10%0%(n=1,291)図表3 所得の比較(注)現金給与総額は全産業平均。(注)農外所得は農業以外の事業収支であり、年金等の収入は含まない。060040020020101518(万円)農業所得現金給与総額農外所得近年、生じている変化・農業総産出額は長年減少傾向が続いていたが、2014年以降増加傾向に転じている(図表4)。背景としては、近年における農産物価格の上昇や、法人経営体数の増加による大規模化等が影響していると考えられる。・農産物価格上昇の要因としては、需要に応じた生産による主食用米の価格回復や、消費者の健康志向の高まりによる鶏肉の需要増等が考えられる(図表5)。・法人経営体数については、近年農業経営体数全体が減少する中において増加を続けている(図表6)。法人経営体は従業員を集めやすく、規模の拡大を行いやすいこと等から、法人経営体数の増加が農業総産出額の上昇に寄与したと考えられる。長期的には縮小傾向にあった農業だが、近年は拡大の兆しがみられている。図表4 農業総産出額の推移01210864218151005200095901985(兆円)米野菜果実畜産その他図表5 農産物価格指数の推移90140130120110100201516171819(2015年=100)農産物総合米野菜果実畜産図表6 農業経営体数の推移04030201001,6001,20080040020141516171819(千経営体)(千経営体)法人経営体全経営体(右軸)64 ファイナンス 2020 Dec.連載経済 トレンド

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