ファイナンス 2020年12月号 No.661
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AI研究、デジタル化等に加え、水素戦略、再生可能エネルギー、Eモビリティ等の環境関連施策が多く記載されており、ドイツが将来に向けて何を重視していくのかがわかります。この中でも、ドイツにおいて、特に環境保護に対する熱意は従来より非常に高く、基本法(憲法)にまで、国家は次世代のために自然を守る責任があるという文言が含まれています。*39昨今では、環境関連施策の中でも、特に気候保護に関して、気候内閣(首相及び気候関連の閣僚で構成)により「気候保護プログラム2030」という包括的な気候保護対策パッケージが昨年の9月に決定されました。ここには、ドイツで初めての気候保護のための法律「気候保護法」の制定、建物と交通セクターに対してのCO2価格設定の導入、脱石炭等が含まれています。*40どれもドイツの環境政策に大きな影響をもつ決定ではありますが、特に石炭は、ドイツの近代化と第二次世界大戦以降の奇跡の経済復興を支えてきた産業であり、例えば、ドイツのメインスポーツであり、鉱夫たちにも愛されてきたサッカーチームの一つのシャルケ(Schalke)では、「Glück Auf(この先の坑道に幸運あれ、実際の起源には諸説あり)」というが鉱夫たちの挨拶が、チームの合言葉になっていたりします。*41そのようなドイツが、石炭からの脱出を決めたのは一つの時代の終わりであり、感慨深い気持ちになります。*39) https://www.gesetze-im-internet.de/gg/art_20a.html*40) https://www.bundesregierung.de/breg-de/themen/klimaschutz/klimaschutzprogramm-2030-1673578 http://www.gesetze-im-internet.de/ksg/KSG.pdf*41) https://schalke04.de/business/hospitality/vip-bereiche/glueckauf-club/*42) https://www.bundesregierung.de/breg-de/themen/nachhaltigkeitspolitik/einwegplastik-wird-verboten-1763390*43) https://www.wahlrecht.de/umfragen/forsa.htm6.おわりに私の2年余りのドイツ滞在を通じて、学んだこと、経験したこと等を踏まえ、色々な観点からドイツを紹介させて頂きました。まだ、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で見通しがつかない部分がありますが、状況が落ち着いたらぜひドイツを訪れてみてください。なお、本稿は11月上旬に執筆しており、各種の情報もその時点のものであることをご了承下されば幸いです。また、本稿は筆者の個人的な見解であり、日本政府及び在ドイツ日本国大使館としての見解ではないことを付言させて頂きます。*42*43私がドイツに来て驚いたことの一つは、ドイツ人の環境保護に対する熱心さです。社会的な動きとしても、前述の気候パッケージの決定の他に、環境への負荷を避けるため使い捨てプラスチック容器の利用禁止法が成立したり*42、同盟90/緑の党という、環境保護を主要な政策課題としている政党が支持率を伸ばしていたり*43、Fridays for Futureという毎週金曜日に学生が学校を休んで環境のためにデモを行う活動が社会現象になっていたりする等、色々な側面で見ることができます。また私自身、自転車道での混雑を経験したり、(※すなわち、ベルリンにおいて、自転車はそれだけポピュラーな手段として受け入れられています)、身近に環境等のことを考えてスーパーマーケット等での購入製品を選択している人がいたり、格安航空は便利だという話をすると飛行機は環境に良くないと指摘される等、普段の生活においても色々な場面で、環境についての意識がより深く根付いているように感じられます。コラム ドイツ人とエコ意識 ファイナンス 2020 Dec.57海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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