ファイナンス 2020年12月号 No.661
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らいであり、特に首都ベルリンに住んでいるのは375万人(2018年、ベルリン―ブランデンブルク統計庁)くらいなので、東京と比べるとかなり人口密度は低めです。その分、ありとあらゆるところに緑があり、休日などは市民の憩いの場となっています。政治体制は、16州からなる連邦共和制をとっており、国家元首は連邦大統領であり、立法府は連邦議会と、各州政府の代表により構成される連邦参議院からなります。連邦議会では、キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)と社会民主党(SPD)が二大政党であり、現在はこの2党が連立を組んでいますが、この他に自由民主党(FDP)や左派党の他、環境に対する意識の高まりから同盟90/緑の党や、EUに対する反発等から独のための選択肢(AfD)も勢力を伸ばしてきています。なお、ドイツにおいて特徴的なところは、行政や産業が首都ベルリンに集中しておらず、各州に分散しているということです。例えば、政治・行政の観点で言うと、教育や文化に関することは、連邦ではなく州に委ねられています。また連邦政府の組織でさえも、首都ベルリンのみに位置しているわけではなく、例えば財政・金融関係の組織だけを見ても、連邦財務省はベルリン、連邦中央税務庁はボン、連邦金融監督庁はフランクフルトにあります。産業という観点においても、ベルリンに産業が集中しているわけではなく、例えば、金融の中心はフランクフルトとなっています。(2)マクロ経済と財政さて、次は、経済・財政状況についても紹介できればと思います。なお、新型コロナウイルスによる経済・財政への影響については、後半で詳しく紹介するので、ここでは昨年までの状況についてご説明させて頂きます。ドイツは経済大国というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実際その通り、GDPの規模は日本に次いで世界第4位、EUの中では最大の規模を誇ります。一方で、ドイツは1990年の東西統一後は、高い社会保障や労働コスト等に苦しめられ、2000年代に入ってからは、失業率も10%を超え、経済成長率もマイナスを記録する年がある等、「欧州の病人」と言われていた時期がありました。しかし、2000年代前半に行われた労働市場改革を経て、失業率は低下し、実質GDP成長率も4%を記録する等、奇跡的な回復を見せました。その後、金融危機の影響は受けたものの、経済成長率は2014年以降堅調に推移、失業率は低下の一途をたどりました。ただし、最近は成長の減速が指摘されていました。実質GDP成長率の推移-8-6-4-20246929394959697989900010203040506070809101112131415161718192021実質GDP成長率の推移※2020年、2021年の値は政府経済諮問委員会による見通し(11月)。その他データは連邦統計庁より取得。カレンダー調整、季節調整済。(%)ベルリンにも緑は非常に多く、例えば大使館の前にある動物の庭(Tiergarten)という公園においては、その名にふさわしく、運が良ければ野生動物を見ることができます。写真は、筆者が同公園を訪れた際に偶然見かけた狐です。コラム ドイツと自然 ファイナンス 2020 Dec.49海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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