ファイナンス 2020年12月号 No.661
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請があった。そのため、今回、ウェブ会議システムを用いたオンラインセミナーの開催を検討することとなった。オンラインセミナーの開催に当たり、まず、ミャンマー側との通信状況の確認を兼ねたテストセミナーを9月に開催した。テストセミナーでは、MOPFI職員を中心とした参加者18名に対し、財務総研から「財務総研の国際協力」等について、特にミャンマーに対するこれまでの支援を中心に説明を行った。通信状況は概ね良好であり、セミナー終了後に実施したアンケートの「セミナー全体を通じた満足度」では、参加者全員が「大変満足である」又は「大体満足である」との回答であった。また、時折参加者から質問も出るなど、対面と変わらない積極的な受講姿勢を感じることができた。テストセミナーで技術的問題は生じなかったことから、翌10月、財務総研として初のミャンマー国内向けオンラインセミナーを開催した。この時、ミャンマー国内では感染拡大期に入っており、10月10日には新規感染者参加者が過去最多となる2,158人を記録していた*6。このため、参加者がPFMアカデミーの施設内に一同に集まることが困難となったが、各自が自宅や自分の職場のIT設備を利用することで、最終的にPFMアカデミー研修生を中心に計41名が参加した。日本-ミャンマーの時差は2時間半あり、時間的な制約もある事から、今回のオンラインセミナーでは「官庁会計システム」のみをテーマに、会計センター職員から同センターの役割やシステムの概要、機能等について講義を行った*7。質疑応答では、システムの導入に費やした期間や職員の人材育成に関する質問があり、オンラインでも対面でのセミナーと同じく、積極的に日本の知見を吸収しようとする姿勢が見られた。セミナー全体の満足度についても、全員*8が「大体満足」と回答しており、「普通」「あまり満足ではなかった」「全く満足ではなかった」との回答は皆無であった。セミナーの理解度も、「普通」と回答した者が1名いたものの、その他*6) WHO:https://covid19.who.int/region/searo/country/mm*7) 日本時間15時半から開始(ミャンマー:13時)し、同17時半(同:15時)に終了するスケジュールであり、質疑応答や意見交換の時間を含めて全体で2時間の構成となっている。オンラインでのセミナー・スケジュールの決定にあたっては、時差を踏まえて、双方の業務時間や昼食・休憩時間などの違いに配慮する必要がある。*8) 4名の無回答者を除く。*9) 6名の無回答者を除く。全員*9が「大変有意義」「大体有意義」と回答をしており、オンライン形式でも満足度、理解度共に高い非常に有意義なセミナーであったと評価している。図表7 セミナーの模様4おわりにCOVID-19の流行を機に世界は大きく変化し、今やテレワークやソーシャルディスタンスなどの新しい生活様式は、既に人々の生活に浸透しているように感じられる。COVID-19によって強制的に変化せざるを得なかった側面は否めないものの、COVID-19への対応を模索する中で、これまでの行動を見直す一つの機会になったことは確かである。研修生の招聘や専門家・職員の派遣を軸とする財務総研の技術協力活動にとっても、アプローチの仕方を再考する一つの機会になったと思われる。本稿でご紹介したオンラインセミナーはその一例であるが、既存の考え方に捉われることなく、今後もより充実した支援を行うべく、ミャンマー側と連携していきたい。最後になるが、11月4日現在、ミャンマーでは1日の新規感染者数は1,000人を超える状況が続き、予断を許さない状況である。ミャンマーを含む世界での感染拡大の早期収束と共に、従来の対面の方法も活用した効果的なセミナーを開催できる日が一日でも早く訪れることを期待し本稿の結びとする。 ファイナンス 2020 Dec.41財務総合政策研究所によるミャンマー計画・財務・工業省支援SPOT

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