ファイナンス 2020年12月号 No.661
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画の上映会を開催。現下の状況の下、2020年6月には、中国で大手配信会社テンセントビデオとの共催で、オンライン配信による日本映画祭を実施、10日間でアクセス数200万、映画再生回数234万回以上を記録。中国の人気俳優マーク・チャオの映画祭アンバサダーも話題に。映画配信のほかトークイベントでは、上映作品の「横道世之介」(港町から大学進学で上京したお人好しの青年とその恋人らが謳歌した青春時代を心温まるユーモアを交えながら描く。)の沖田修一監督・主演の高良健吾・西ヶ谷寿一プロデューサーによる対談なども配信。国際交流基金×テンセントビデオ共催事業「オンライン日本映画祭」での特別対談風景映画『横道世之介』主演俳優・高良健吾さん、沖田修一監督(前列)、西ヶ谷寿一プロデューサー(後列)、提供:国際交流基金(4)ロシア旧ソ連時代の1976年に黒澤明監督がソ連との合作映画「デルス・ウザーラ」(シベリアに暮らす猟師デルス・ウザーラと地誌調査隊のアルセーニェフの友情と別れを描く)で2度目の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞。そのロシアでは、「ロシアにおける日本年2018」のため、JFFをロシアにも拡大して実施。2019年10月からモスクワ、サントペテルスブルク、ウラジオストックなど10都市で開催。アニメ「海獣の子供」(2019年、田舎町で暮らす中学生とジュゴンに育てられたと兄弟との出会いと大自然に触れ合う彼らのひと夏)や広瀬すず主演の「ちはやふる-結び-」(2018年、少女コミックスを実写映画化。“競技かるた”にかける高校生たちの最後の戦い)など日本映画45本を上映。「海獣の子供」のロシアでの反応について、田中栄子プロデューサーは「登場人物の動きやキャラクターの個性に反応してくれているところが印象的でしたね。」と語る。(5)インド人口13.5億人と中国に迫り、作品数、観客動員数世界一の映画大国。スポ根TVアニメの名作、「巨人の星」が2012年にインドへ展開。お国柄を反映し、星飛雄馬は野球選手ではなくクリケット選手になり、父、星一徹の有名な「ちゃぶ台返し」は、「『食べ物を粗末にする行為は受け入れがたい』と現地スタッフから注文が付き」、コップの水をひっくり返すという。そのインドでは、昨年大ヒットの新海誠監督の「天気の子」について、現地の日本アニメのファンがインド公開を求める署名活動を行い、劇場公開に。2017年から開催している「インド日本映画祭」を2019年は規模を拡大して開催し、デリー、ムンバイなどインド7都市で「天気の子」を含む日本映画25作品を上映。日本のオリジナルアニメ映画がインドで一般公開されるのは史上初だという。新海監督は、「ツイッターで僕のアカウントに、インドの方から『インドで署名を始めているので、サポートしてください』という英語のメッセージが来たんです。…その時点で確認したところ、すでに1万人ほどが署名を行なっていました。…インドで公開できるかわからないけれど、皆さんの気持ちは本当に嬉しいので、配給会社の方にぜひ伝えておきます、という内容のツイートをしたんです。そうしたら、そこから後の僕のツイッターのリプライはインド人からで埋まってしまって(笑)。…そうするうちに署名も5万人を超え、東宝からもインドの配給会社が決まりましたと。」と語る。「天気の子」は開幕作品。新海監督がインドを訪問。ニューデリーでの上映会で登壇し、インドのファンと交流。「自分が人生で訪れたことのなかった国に、自分の映画を好きな人がこんなに存在することを、これでもかというくらい目の当たりにさせられて、すごく勇気づけられました」という。国際交流基金ニューデリー日本文化センターの宮本薫所長によると、「日本のアニメ映画がインドで商業公開されるのは今回が初めてとなる。実写映画は、6月に公開された「万引き家族」(是枝裕和監督)が第1号となった。今年は実写、アニメともに日本の映画がインドで初めて商業公開にこぎ着ける快挙の年となった。」という。36 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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