ファイナンス 2020年12月号 No.661
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だ知られていない名監督の作品と、よく知られている監督の知られざる傑作というひとひねりのある作品を32本紹介。日本でも最近になって再評価、再発見された傑作がフランスの観客からも非常に大きな反響を呼んだという。第三部:現在活躍中の監督の作品を紹介。是枝裕和監督の最新作、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得した「万引き家族」、大林信彦監督の「花筐」(原作「花筐」は三島由紀夫が読み小説家を志したという純文学)を含め、映画界をけん引する巨匠から若手監督までの37作品で日本映画の今を伝えた。常盤貴子、宮﨑 あおい、役所広司、大林宣彦監督といった上映作の監督、出演者とファンとの交流イベントも開催。大林宣彦監督は、「若い人たちは、『…世界は一つだ。世界を一つにすることが、映画の力だ』と信じて映画を作ってくれている。そのことに誇りを感じています。」と語り、役所広司は、「映画は、それを通じて相手の国のことをよく理解できるもの。そういう意味でとても良い外交手段だと思います。」と、NHKのフランス語講座「旅するフランス語」でナビゲーターを務めていた常盤貴子は、「フランス語を学ぶ番組に出演した際、フランス人の映画に対する見方が日本人と大きく違うことを知りました。日本とフランスはどちらも歴史のある国です。違う見方をフランスから学び、お互いの素敵な文化を世界に広めていくことができたらと思います。」と語る。(3) 海外における日本映画祭JFF(Japanese Film Festival)海外の人たちに日本映画ファンの輪を広げるには、「ジャポニスム2018」のような節目の大イベントだけではなく、継続的な取り組みも重要。日本映画の認知度を高め、日本映画のファン層を拡大するため、20年以上、世界各地のJFF(日本映画祭)ネットワークをプロデューサーとして統括している国際交流基金映像事業部の許斐(このみ)企画役。オーストラリアでの日本映画祭を皮切りに、徐々にアジアを中心にJFFネットワークを拡大。当初は映画会社も海外展開には積極的ではなく、協力を得るのも難しかったというが、毎年、関係者と粘り強く交渉を重ね、徐々に海外での映画祭も充実してきたという。映画祭の成功には現地の人が喜ぶ作品が多いのが良いのは当然だが、そのような作品は、各社が自力でも海外展開できることもあり、映画祭のラインアップを揃えるのはいつも苦労するという。長年の付き合いからか、東京国際映画祭のレセプションに行くと、内外の映画業界人が彼に親しげに話しかけて来ていた。JFFネットワークは、2016年国際交流基金が主催する「JFF(Japanese Film Festival:日本映画祭)アジア・パシフィック ゲートウェイ構想」として始動し、アジア・パシフィック地域において日本映画への興味・関心を喚起し、日本のファン層の拡大を目的として、オンライン、オフラインの両面から、「日本映画を通して人々が集い楽しむ場(プラットフォーム)」を構築し、14ヵ国(アセアン10ヶ国、オーストラリア、中国、インド、ロシア)で展開。昨年は17万人以上を動員し、4年間で累計50万人以上の人たちに日本映画を届けた。JFFネットワークのプロデューサー許斐は「当初の目標は、2020年までに100万人(動員数とオンラインのユニークユーザー数の合計)のプラットフォームを作ることでしたが、これは前倒しでほぼ達成しました。ただ、それで本当に日本映画の活性化になったかというと、実感としてまだまだです。これを何百万人単位で大きくすれば、周りの動きも少し変わってくるのではないかと考えています。新型コロナ感染症が拡大する中、世界的にストリーミング(ネット配信)が増えていますが、人と人とのつながりをミッションとする国際交流基金では、リアルイベントは欠かせません。両者を共存させるには『デジタルとリアルの融合』が必要です。今後、リアルイベントとしてのJFF動員数とオンラインでの視聴者の両方で、JFF全体の参加者を増やしていく施策を考えて行きます。」、「『いつでも、どこでも日本映画』をキャッチフレーズに、最新の日本映画を各国語字幕付きで提供するJFF(リアルイベント)を実施しつつ、2020年10月からは、新たな日本映画情報ウェブサイト『JFF Plus(ジェイエフエフ・プラス)』をオープンしました。配信事業の一つとして、2020年11月20日から2021年3月までの5ヵ月間、そのサイト上で『オンライン日本映画祭(JFF Plus:Online Festival)』を開催します。世34 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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