ファイナンス 2020年12月号 No.661
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東京国際映画祭について、昨年就任した安藤裕康チェアマン(前国際交流基金理事長)によると、「そもそも日本映画はたくさんの方々のおかげで確固たる地位を築き上げ、海外からも高い評価を受けています。また東京は様々な魅力を誇る街ですが、特に映画に関しては多様な外国の作品が数多く上映されていて世界に冠たる映画の都です。ですから東京を軸として、映画というメデイアを通じた交流の輪が地球のあちこちに大きく広がっていく、そんな映画祭にできたらいいなという願いでいっぱいです。」、「TIFFを世界的な影響力のある国際映画祭に育てていきたいと考えています。」と語る。今年は、「コロナ禍の影響で、やりたいことができなくなった一方、逆に改革が加速したという面もあります。」と安藤チェアマンは語る。「コロナ禍で海外から審査員が呼べなくなった。オンライン審査でもコンペを実施すべきとの声もあったが、審査委員が一堂に会して議論する本来の姿でないのなら、今年はコンペをなくそうと決断しました。」という。二つ目の変化は例年東京国際映画祭終了直後に開いていた、今年21回目を迎える、アジアを中心に気鋭監督の作品を集めた映画祭「東京フィルメックス」の同時開催。三つ目の変化は、「アジア交流ラウンジの設置」で、「アジアを代表する映画人たちが連日、オンラインでトーク」をしたという。新設された「TOKYOプレミア2020」部門の上映作品を対象とした観客賞/東京都知事賞は、大九明子監督の新作「私をくいとめて」(芥川賞作家・綿矢りさ原作、「おひとりさまライフを満喫する31歳のみつ子(のん)が、脳内の相談役「A」とともに年下男子との恋に挑む“崖っぷちロマンス”」)が受賞。大矢監督は「まだまだ出歩くことに不安を抱きながらも、チケットをとって劇場に足を運んでいただき、映画をご覧になって点数を入れて頂いた。おひとりおひとりの1票が、私共に賞をくださったこと、いつも以上に感慨ひとしおです」と感謝。(2) ジャポニスム2018における「日本映画の100年」日本映画を海外で一般の人たちに直接体感してもらうなら、海外での日本映画祭。日仏友好160周年を記念し、2018年にフランス全土で総動員数300万人を超えた日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」。その中で「日本映画の100年」は最大プロジェクトの一つ。日本映画の歴史を1920年代から2018年の最新作まで、日仏の専門家が議論を重ねて厳選し、3部構成で紹介。総動員数300万人超え 日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」が開催されたフランス、パリ第一部:1920年代から1940年代の映画27本で日本映画の萌芽期から黄金期が始まる時代の作品をカバー。サイレントの名作、「雄呂血」(1925年、二川文太郎監督、“バンツマ”こと阪東妻三郎の傑作チャンバラ時代劇。剣戟・乱闘映画ブームを巻き起こした記念碑的作品。)に合わせて、注目の若手活動弁士・坂本頼光と楽団カラード・モノトーン・トリオによる公演。パリを皮切りに、トゥールーズ、リヨン、ニースにも巡回し、各地で満員の大盛況。第二部「日本映画再発見」:第二次大戦後から2000年代までの55本を2セクションに分け、第一セクションでは、誰もが知る22作品を最新技術で生まれ変わったデジタル修復版で再発見。11月号でご紹介した小津安二郎監督「東京物語」(1953年)、黒澤明監督「羅生門」(1951年)、「七人の侍」(三船敏郎主演「観客のみならず世界中の映画人に多大な影響を与えた代表作」)(1954年)、今村昌平監督「楢山節考」(1983年)ら巨匠による日本映画「定番」傑作のデジタル修復版は、これまでの版で見えていなかった暗いシーンがクリアになるなど、目の肥えたフランスの日本映画ファンにも新鮮な驚きをもたらしたといい、小津作品に出演した香川京子、有馬稲子ら往年の名優のトークも開催。第二セクションでは、フランスではま ファイナンス 2020 Dec.33サヨナラ、サヨナラ、サヨナラSPOT

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