ファイナンス 2020年12月号 No.661
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京都のさる茶の宗家を派遣して盛大なお茶会を開いたり、人間国宝の刀鍛冶に映画に出てくるような刀を皇太子の目の前で打って見せたという。映画にはきっとその国の文化に人を惹きつける力があるのだろう。1996年、ディズニーと徳間書店の提携により、「もののけ姫」の世界配給をディズニーが行い、「風の谷のナウシカ」などスタジオジブリの過去の作品も世界配給開始。「これをきっかけにジブリ映画は世界に広まっていく」ことに。ディズニーのホームビデオ部門が売り出した「となりのトトロ」のビデオ(「もののけ姫」の予告編入り)は初回120万本、「1998年には『もののけ姫』もビデオ化されて330万本という初回出荷の新記録を打ち立てることに」なったという。初回ビデオ出荷が330万部の新記録を打ち立てた1997年の興行収入1位「もののけ姫」、出典:スタジオジブリ公式Websiteただ、日本では、劇場公開からの興行収入、配給収入がそのプロジェクトの収入に占める割合が非常に高く、国内だけでなんとかなっていることもあって海外進出が進まないとも言われる。映画を取り巻く環境が大きく変化しているが、映画の海外展開については、これまで様々な取り組みが行われてきており、その一部をご紹介。(1) 東京国際映画祭(TIFF Tokyo International Film Festival)国際映画祭では世界中の映画関係者が交流し、日本映画を知るには良い機会。今年33回目を迎えた国内最大の映画祭、東京国際映画祭。今年、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を獲得した黒澤清監督は、かつて、この映画祭で上映した「CURE」を仏ル・モンド紙の評論家が絶賛。世界的に注目を集めるきっかけとなったという。1985年の第1回は渋谷を中心に開催。「オープニングを飾った黒澤明監督の『乱』を含む140本の作品を上映。開催にあたっては、世界の映画人からメッセージが届けられた。その舞台となった渋谷では、初日にパレードが行われ、大通りに面した屋外ステージで連日イベントが催されるなど、街は映画祭一色に。また駅前広場には、歴史に名を残す映画人たちのイラストが焼き込まれた陶板のモニュメントが飾られ、映画評論家・淀川長治氏による除幕式が行われた。」。コンペティション部門の審査委員には今村昌平監督も名を連ね、アニメ・フエスティバル部門では、前年に公開された宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」上映。2003年に最上階に森美術館を持つなど「文化都心」や、世界中の人々が集まる街にすることを目標とする「国際性」もコンセプトに成り立つ六本木ヒルズが開業。2004年から六本木も開催地に加わり、2009年以来、六本木を中心に開催。今年は、海外からの作品ゲストおよびコンペティティブ部門の国際審査委員の来日も難しいため、その代わりに「TOKYOプレミア2020」部門を新設し、32本上映。10月31日から10日間の開催期間中、100本超の映画を上映。東京国際映画祭の開催地、六本木32 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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