ファイナンス 2020年12月号 No.661
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(2)「第二のテレビ黄金時代」到来当初、ハリウッドの映画スタジオ大手から安く入手できる古い映画を購入。Netflixを脅威に感じたハリウッドの映画スタジオ大手が2012年までに最新DVDのリリースを遅らせ、デジタル配信料の値上げに踏み切ると、Netflixは破格の条件(魅力的な制作費と、コンテンツには一切関与せず、監督への全権委任を確約)でコンテンツ作りを開始。「ベテランプロデューサーの直感や過去の常識にとらわれず、ビックデータを信じて監督や俳優を選ぶことを基本にし」、「海外の契約者の好みに合ったコンテンツを制作していくうえでもビッグデータを全面活用」、2016年1月、世界130か国で新たにストリーミングを開始。世界190か国へ進出、中国を除き実質的に全世界を網羅。「テレビドラマは広告の制約から解放され、自由を得た。同質的な視聴者にアピールする作品である必要はなくなり」、「第二のテレビ黄金時代」が到来したという。2018年のヴェネチア国際映画祭では、政治的混乱に揺れる1970年代のメキシコを舞台に家政婦と雇い主一家の関係を描いたNetixの「ROMA/ローマ」が監督賞、外国語映画賞、撮影賞を受賞。Netflixはスタジオジブリ作品の配信権を獲得し、日本などを除く約190カ国で「となりのトトロ」などの作品を配信。2020年4月、ハリウッド映画「マトリックス」のアイディアになったとも言われる「攻殻機動隊」(人々の意思が“電脳”に繋がれた近未来、電脳犯罪に立ち向かう攻殻機動隊の物語)も全世界独占配信スタート。NetixのCEOのヘイスティングスは「日本を含めアジアの事業は始まったばかりだと思う。コンテンツや会員拡大のための投資を続ける。中国は規制があるので、日本と韓国、インドに集中している」、「日本には世界で愛されるコンテンツを生み出す役割も求めている。12月に配信するドラマ『今際(いまわ)の国のアリス』は世界で成功させたい。日本の文化を輸出するため、アニメにも力を入れている」と語る。(3) 伝統的メディア企業の反撃とネット配信市場の競争激化伝統的なメディア企業は対抗して、2017年以降各社が大型M&Aに乗り出し、ディズニーが713億ドルで21世紀フォックスを、AT&Tが850億ドルでタイムワーナーを買収。「ハリウッドの中でも頭一つ抜けたコンテンツの巨人」ディズニーは2019年に独自のストリーミングサービス「ディズニープラス」(主なコンテンツは「スターウォーズ」シリーズなどに加え、21世紀フォックスの買収で「タイタニック」、「アバター」などの大ヒット映画なども新たに獲得。)を開始、「ディズニープラス」開始に合わせてNetixへのコンテンツ供給を全面停止、独占放送権を失ったNetixはコンテンツに大きな穴。現下の状況下、ディズニーはテーマパークの営業停止などにより19年ぶりの赤字決算、映画の公開も延期するが、ネット配信を強化するという。また、世界最大級の通信会社と世界最大級の娯楽・メディア企業が合体。AT&T・ワーナーメディア連合は2019年後半にストリーミングサービス「ウォッチTV」を開始。更に、2018年、アップルはオリジナルコンテンツ制作に向け大規模なスタジオを開設し、スティーブン・スピルバーグらハリウッドの大物と契約。2019年にはオリジナル作品のストリーミングサービス「アップルTV+」を開始。現下の状況でNetflixは、売上高と純利益が過去最高を更新、2020年末までに世界の会員が2億人を超えるとの見通しを発表。「新型コロナウイルスによる外出自粛の特需は一服したが、世界で事業を展開し、多様なコンテンツを抱える強みを武器に成長を見込む。」という。他方、アニメ「鬼滅の刃」などの人気コンテンツを持つが、配信基盤は弱いとされるソニーは世界で7千万人の顧客を抱える米アニメ配信大手を買収するとの報道も。「コロナによる巣ごもり需要で動画配信サービスが世界で堅調な中、アニメなどの優良なコンテンツの獲得競争は激しさを増している。」という。4日本映画の海外展開あるアラブの産油国駐在の大使から聞いた話だが、当時、その国での日本の石油採掘権が期限切れを迎え、各国がその権益の争奪戦を繰り広げていたという。その国の実力者である皇太子が、トム・クルーズ、渡辺謙出演の明治初頭の武士道を描いた「ラストサムライ」を3回も観て、日本文化に関心を持っていると聞きつけ、日本企業はその皇太子の接待のために ファイナンス 2020 Dec.31サヨナラ、サヨナラ、サヨナラSPOT

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