ファイナンス 2020年12月号 No.661
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1はじめに ーアニメ「映画『鬼滅の刃』、週末の興行収入が日本を除く全世界の興行収入を上回る ──New York Times報道」丁度、本稿を執筆中の10月に公開された人気漫画、TVアニメの劇場版「鬼滅の刃」が、現下の状況でディズニーの大作も公開延期となる中、日本映画最高記録となる興行3日間で46億円、342万人動員という映画界に久々に明るい話題。ニューヨークタイムズ紙も、“What Pandemic? Japanese Film Draws a Record Flood of Moviegoers”として、「映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が10月16日から18日までの3日間で記録した約46億円という興行収入は、同期間の日本を除く全世界の映画興行収入を超えている」と伝える。2018年の大ヒット「ボヘミアンラプソディー」(13回観たという人をTVで紹介していた)のようにリピーターも多く、その後も好調で、「公開10日で興行収入100億円」は、歴代興行収入1位の「千と千尋の神隠し」のペースを抜き、45日間の興行収入が約275億円、観客動員数は2,053万人を突破。「興行収入では、『タイタニック』を抜いて歴代2位に浮上した。同1位は、『千と千尋の神隠し』の308億円。いよいよ歴代1位が迫ってきた。」という。最終回は、最近の映画を巡る環境として、益々、プレゼンスが高まっているアニメ、映画のネット配信、日本映画の海外展開等をご紹介。2アニメ昨年興行収入1位の「天気の子」もしかりだが、興行収入ランキングの上位(邦画トップ3入りは、1980年代30本中5本、1990年代13本、2000年代15本、2010年代17本がアニメ)や海外で興行収入上位に入る日本関係の映画もアニメ関連が多い(2019年は「名探偵ピカチュウ」や「バトル・エンジェル」(日本の漫画「銃夢」が原作、「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督)が世界の映画市場でランキング入り。)。アニメについても、何を取り上げるべきかは実に悩ましく、異論もあろうかと思う。(1)アニメ事始め日本のテレビアニメの歴史は、手塚治虫から始まると言われ、最高視聴率40%超、1963年に始まったモノクロアニメ「鉄腕アトム」が「後のテレビアニメ隆盛を決定づけ」たという。テレビアニメ出身の宮崎駿監督は、「日本のアニメは、マンガの原作をアニメ化し、マンガのキャラクターデザインを流用し、…マンガ家志望の少年少女からスタッフを集めて成り立っている」という。1966年「魔法使いサリー」(お転婆な魔法使いサリーが人間の世界に来て魔法よりも大切なものを知っていく物語)、1968年「太陽の王子ホルスの大冒険」(岩の巨人モーグに助けられた北国の少年ホルスの冒険物語。高畑勲の初演出の長編動画)、1971年「ルパン三世」(「大人向けアニメーションに挑んだ意欲作」)、1974年、今も家庭教師センターのサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ―最近の日本映画とその海外展開(下)元国際交流基金 吾郷 俊樹「鬼滅の刃」は書店でも大人気。都内某書店にて「『鬼滅の刃』は各巻お一人様一冊まででお願いします」の手書き文字が生々しい。26 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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