ファイナンス 2020年12月号 No.661
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プの問題から目をそらした、占領地における軍票発行といった非常時にしか通用しない理論だということである。6今後のわが国の財政危機本稿の最後に、今後のわが国の財政危機について述べておくことしたい。それは、このままでは、国民負担が極めて重くなる中で、将来世代が財政再建に直面しなければならなくなるるというものである。図表1は、いわゆる天の川のグラフと言われるもので、財務省のホームページにある「日本の財政関係資料」の中の「OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係」のグラフである。このグラフは、現在の給付と負担のバランスが不均衡になっており、制度の持続可能性を担保するためには、社会保障関係支*28) 潜在的国民負担率は、税と社会保障の合計である国民負担率に将来世代の負担になる公的債務を加えたもので、それによって政府の歳出が賄われることから政府規模をあらわすものになっている。出の改革が急務だといったことを説明するために使われているものである。同グラフの横軸を国民負担率から潜在的国民負担率に変えたのが図表の2で、政府規模が潜在的国民負担率であらわされることから、我が国の政府規模がどんどん大きくなっていることを見て取れるグラフになっている*28。図表1のグラフで、1990年以降、矢印が垂直に上がっているのは、1990年以降、社会保障関係支出の増大に見合う負担を国民に求めることなく、将来の子供たちの負担になる借金回しにしてきているからである。図表2から見て取れるのは、そのように借金回しにしても政府規模がどんどん大きくなっていくのは避けられないことから、2060年には我が国の実質的な国民負担は、今日のどの西欧諸国よりも大きくなっていってしまうことである。図表1 OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係オーストラリアオーストリアベルギーチェコデンマークエストニアフィンランドフランスドイツギリシャハンガリーアイスランドアイルランドイスラエルイタリア韓国ラトビアルクセンブルクオランダノルウェーポーランドポルトガルスロバキアスロベニアスペインスウェーデンスイス英国米国510152025303515253545我が国は諸外国と比べ、給付と負担のバランスが不均衡の状態に陥っており、制度の持続可能性を確保するための改革が急務です。(%)8.OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係国民負担率(対GDP比)一般政府の社会保障支出(対GDP比)改革を行わない場合、社会保障支出が膨張日本(1955年)日本(1980年)日本(1990年)日本(2015年)日本(2060年)(%)(出典)国民負担率:OECD “ National Accounts”、“Revenue Statistics”、内閣府「国民経済計算」等。社会保障支出:OECD “ National Accounts”、内閣府「国民経済計算」。(注1)数値は、一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金を合わせたもの)ベース。(注2)日本は、2015年度まで実績、諸外国は2015年実績(アイスランド、ニュージーランド、オーストラリアについては2014年実績)。(注3)日本の2060年度は、財政制度等審議会「我が国の財政に関する長期推計(改訂版)」(2018年4月6日起草検討委員提出資料)より作成。給付と負担のバランスを回復するためには、以下の3つを組み合わせた改革が必要。①GDP成長率を高める②社会保障支出の伸びを見直す③国民負担を見直す24 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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