ファイナンス 2020年12月号 No.661
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1はじめに本年9月17日(木)、サウジアラビア議長下においてG20 財務大臣・保健大臣合同会議がオンライン形式で開催され、日本からは、麻生財務大臣と田村厚生労働大臣が出席した。国際保健は、日本が国際的に主導してきたアジェンダであり、当合同会議も日本がG20議長を務めた2019年に初めて開催したものである。今般の合同会議は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、未曾有の保健危機が起こる中、G20の財務当局と保健当局の連携と取組を国際社会に示す極めて重要な会議であった。本稿では、合同会議開催に至るまでの経緯も振り返りつつ、その議論と成果を紹介したい。2国際保健に関する日本の取組国際保健は、新型コロナ感染症が流行する以前から、日本政府の国際開発における重点分野の一つである。特に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成、即ち、「全ての人々が、適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払可能な費用で受け取られる状態」を実現することに、日本政府は強くコミットしてきた。日本政府がUHCを推進する契機としては、「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が示された2016年5月のG7伊勢志摩サミットが挙げられる。続いて、2017年12月には、「UHCフォーラム2017」を東京で開催し、2018年4月には世界銀行・IMF春会合の主要イベントの一つとして日本政府、世界銀行、WHO共催の下、「UHC財務大臣会合」を開催した。こうした国際会議で、日本は、UHCの重要性や、資金面での取組を進めるために財務大臣と保健大臣が連携する必要性を提唱してきた。以上の流れの中で、日本が議長国となった2019年のG20では、第1回財務大臣・保健大臣合同会議を大阪で初めて開催し、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントを確認した。当コミットメントでは、経済発展の早い段階でUHCに取り組むことが重要であり、そのためには、財務大臣と保健大臣の連携により、保健財政制度を設計する取組が重要であること等、これまで積み重ねてきた議論を基にUHCファイナンスの原則を確認した。3第2回合同会議開催に至る経緯サウジアラビア議長下の2020年G20では、当初、国際保健に関するモメンタムは必ずしも高くなく、財務大臣・保健大臣合同会議の開催も見通せない状況であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染が徐々に拡大し、3月11日、WHOがパンデミックに該当すると発表するに至り、環境は一変した。3月26日には、G20議長国サウジアラビアの呼び掛けにより、各国内の経済状況や感染拡大防止策について議論を行うため、G20臨時首脳テレビ会議が急遽開催され、新型コロナ感染症によるパンデミックに対応するため、首脳からの要請として、第2回財務大臣・保健大臣合同会議を開催することとされたのである。4第2回合同会議での議論と成果財務大臣・保健大臣合同会議が目指すべき成果については、大臣会議が開催される1か月以上前から、各国の事務方により、ビデオ会議やメール等を通じて集中的に議論がなされた。特に、新型コロナ感染症への対応を巡る国際協調のあり方については、各国間で意見の隔たりが大きく、一時は成果文書を発出できるか第2回G20財務大臣・ 保健大臣合同会議について国際局 開発政策課 課長 河邑 忠昭/同 開発政策調整室長 濱田 秀明 同 国際保健専門官 柳川 優人/同 環境調整第二係長 長谷川 健太18 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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