ファイナンス 2020年12月号 No.661
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本年のIMF・世界銀行グループの年次総会は新型コロナウイルス感染症の影響のため、テレビ会議形式で開催された。例年この期間中に行われるG7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同開発委員会(DC)も、同様にテレビ会議形式での開催となった。以下、各会議の議論の概要を紹介したい。1G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2020年10月13日)G7においては、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、本年3月以降、各国の感染や経済の状況、政策対応について頻繁に意見交換を行ってきている。今回のG7においても、麻生財務大臣から、日本は、感染対策を講じつつ経済活動の再開に取り組んでいる旨を説明した。また、今回のG7では、グローバル・ステーブルコイン(GSCs)、中央銀行デジタル通貨(CBDCs)といったデジタル・ペイメントについても議論し、声明をとりまとめた。具体的には、・GSCsについては、いかなるプロジェクトも、法律・規制・監督上の要件に十分に対応するまではサービスを開始すべきではないとのG7の立場を再確認した。・公的部門は、法定通貨の供給、独立した金融政策の実施、規制・監督上の役割を通じ、決済システムの安全性・効率性、金融の安定性、マクロ経済目標の達成を確保する上で必要不可欠な役割を果たしており、こうした文脈においてG7当局の多くが、CBDCsに関連する機会とリスクを探求しているとの認識を示した。また、国内決済システム・国際通貨システムの安定のためには、公的部門による透明性、法の支配、健全な経済ガバナンスへのコミットメントが重要であることを確認した。・ランサムウェア(コンピュータウィルスによる身代金要求)については、パンデミックの中で脅威が増大しているとして、G7としてこの脅威と戦う決意を確認した。日本は、GSCなどのデジタル・ペイメントについて、日本議長下のG20で昨年10月にプレスリリースをとりまとめるなど、国際的な議論を主導してきている。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う危機により、決済手段のデジタル化が加速している中、今般、デジタル・ペイメントをめぐる現下の課題についてG7の共通理解を世界に発信できたことは、大きな意義があると考えている。2G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2020年10月14日)G20については、本年2月にサウジアラビア議長下で最初の会議が開催された(本誌2020年4月号参照)後、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、3月に2回の財務大臣・中央銀行総裁特別会合が開催された。その後4月、7月の会合を経て、今回は本年6回目の開催となった。今回の会議では、世界経済、G20行動計画の更新、途上国の債務問題、国際租税、金融セクター等について議論が行われた。まず世界経済について、経済が徐々に再開し、政策の効果が顕在化し始める中で回復の兆しがあるものの、回復にはばらつきがあり不確実性が高いこと、G20として引き続き全ての利用可能な政策手段を用IMF・世界銀行グループ年次総会および G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2020年10月13~16日、テレビ会議形式)国際局国際機構課長 今村 英章/国際局国際機構課 齋藤 浩暉国際局開発機関課長 田部 真史/国際局開発機関課 山本 麻莉乃 ファイナンス 2020 Dec.15SPOT

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