ファイナンス 2020年12月号 No.661
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3.2  第2の柱(軽課税国への利益移転に対抗する措置の導入)第2の柱では、軽課税国への利益移転に対し、国際的に合意された最低税率による法人課税を確保するルール(ミニマム課税)の導入が検討されている。第一に、軽課税国に所在する子会社等に帰属する所得について、親会社等の所在する国・地域において、最低税率まで上乗せして課税するルール(所得合算ルール(Income Inclusion Rule))である。また、これを補完する制度として、軽課税国への支払を行っている子会社等に対し、支払会社等の所在地国で課税するルールが検討されている(軽課税支払ルール(Undertaxed Payment Rule))。具体的な最低税率の水準(両ルール共通)については引き続き議論を継続している。その他、支払受取者の所在地国が軽課税の場合に租税条約の特典を否認するルール(租税条約の特典否認ルール:Subject to Tax Rule)や国外所得免除方式を採用する国・地域について、所得合算ルールの適用のために外国税額控除方式への切り替えを認めるルール(スイッチオーバールール:Switch-Over Rule)も併せて検討されている。4影響評価本制度が導入されると税収や経済にどのような影響があるのか。制度の詳細が決まっておらず、また特に多国籍企業についてデータ制約がある中で、税収や経済への影響を予測することは困難ではあるが、一定の前提の下、OECD事務局は、青写真の公表に併せて試算結果を公表した。具体的には、世界全体での税収は、最大で年800億ドル程度増加すると推計している(所得グループ別の結果は下図参照)。また、国際的な合意に至らず各国の一方的措置(詳細は後述)が拡大し貿易紛争が増加する場合、世界全体で最大1%を超えるGDPの押下げ効果があるとの分析も行っている。5最近の海外の動向2019年7月、仏は国内世論の高まり等を受け、国際的な合意が得られるまでの暫定的措置として、デジタル企業に対する独自のデジタルサービス税を導入した。これに対し米国は、同年12月に仏産スパークリングワインやチーズ等に対する報復関税の適用を示唆したが、2020年1月の両首脳の電話会談を経て、それぞれの措置の適用を、合意に向けた議論が継続する2020年末までは停止することとされた。しかし、今第1の柱:市場国での販売活動等に係る移転価格ルールの定式化等第1の柱:市場国での販売活動等に係る移転価格ルールの定式化等販売子会社等の収入(市場国)費用等利益B市場国における収入(市場国が利益B以上に課税しようとする場合)効果的な紛争解決メカニズム販売子会社の適切な利益の算定が困難多国籍企業利益≪企業所在地国≫≪市場国≫市場国と企業の紛争が多発ブランド等の無形資産が重要なビジネス基礎的な販売活動に○%の利益を保証税務当局課税12 ファイナンス 2020 Dec.SPOT

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