ファイナンス 2020年12月号 No.661
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3青写真の概要今回取りまとめた青写真は、第1の柱については約230ページ、第2の柱については約250ページにもわたり、制度の詳細な設計図が記載されている。他方、下記にも示すとおり、重要な数値基準や幾つかの制度内容については、未規定・両論併記となっているものもあり、今後の作業課題となっている。詳細については「青写真」そのものをご参照いただきたいが、ごく簡単に制度概要を次に示す。3.1  第1の柱(市場国に対し適切に課税所得を配分するためのルールの見直し)第1の柱は、大きく分けて3つの要素から構成されている。第一に、「PEなければ課税なし」に係る課題への対応策として、多国籍企業が活動する市場国に対して、物理的拠点の有無にかかわらず、新たに課税権を配分すること(国際課税原則の見直し(「利益A」))が検討されている。具体的には、大規模な多国籍企業を対象に、グループ全体の利益のうち、市場国の貢献によるものと見なしうる一定割合を市場国に売上等による定式で配分する方向で議論が進んでいる。対象は、「自動化されたデジタルサービス(Automated Digital Services)」及び「消費者向けビジネス(Consumer Facing Businesses)」の2種類で、たとえば、前者はオンライン広告やクラウドコンピューティングサービス、後者は家電製品や衣服、化粧品等の販売が該当する。対象企業の規模に関する具体的な閾値や、利益の配分割合については合意が見られていない。第二に、多国籍企業の販売子会社における適切な利益の算定が困難となっていることを受け、市場国における基礎的な販売活動について、「独立企業原則」に基づき一定の利益を市場国に保証するルールが検討されている(「利益B」)。この背景には、多様化する販売子会社の機能・資産・リスクの評価について、市場国と企業との間で紛争が頻発していることがある。具体的な利益率の水準や対象となる取引・販売活動の範囲等については引き続き議論を継続している。第三に、効果的な紛争防止・解決手続である。「利益A」及び「利益A以外」のそれぞれについて、義務的・拘束的な紛争防止・解決手続が検討されている。紛争への対応は、企業・執行当局にとって極めて重要な課題であり、実効的な制度となることが強く期待されている。第1の柱:市場国への新たな課税権の配分第1の柱:市場国への新たな課税権の配分‣大規模な多国籍企業グループの全体の利益の一定割合を市場国に配分‣自動化されたデジタルサービス(ADS※1)と消費者向けビジネス(CFB※2)を対象•ADSの例:オンライン広告、クラウド・コンピューティング・サービス•CFBの例:家電製品、衣服、化粧品等の販売・物理的拠点がないため課税できない・市場国で生み出された価値に見合った課税ができない多国籍企業売上≪企業所在地国≫≪市場国≫課税超過利益通常利益費用等利益A物理的拠点の有無によらず、売上等に応じて市場国間で配分多国籍企業グループ全体の収入市場国ビジネスの提供税務当局※1ADS:Automated Digital Service※2CFB:Consumer Facing Business ファイナンス 2020 Dec.11経済のデジタル化に伴う国際課税上の対応:青写真(Blueprint)の公表 SPOT

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