ファイナンス 2020年12月号 No.661
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不正使用の規制面などで 制度による違いが出る地域ブランドを指定する制度には酒類のGIの他に農林水産省の「農林水産物等のGI制度」、特許庁の「地域団体商標制度」がある。農林水産物等の地理的表示制度は、酒類等を除く農林水産物や飲食料品等が対象で、北海道の「夕張メロン」、兵庫県の「神戸ビーフ」、福井県の「越前がに」など、全国で約100産品が指定されている。酒類の地理的表示制度とは、根拠法等が異なるが、制度の目的等はほぼ同じだ。一方で「地域団体商標制度」は、「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品(サービス)の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和する制度。「地域名+商品(サービス)名」の組み合わせからなる文字商標は、通常、「全国的に周知」されていなければ登録ができないが、一定の条件を満たせば「地域団体商標」として登録が可能になる。たとえば、北海道の「摩周メロン」、宮城県の「仙台牛」、福岡県の「博多なす」などが指定を受けている。地域団体商標制度は、酒類のGI制度、農林水産物等の地理的表示制度と異なり、対象とが限定されておらず、すべての商品やサービスが対象となる。また、不正使用された場合に、酒類の地理的表示制度や農林水産物等の地理的表示制度は、国による不正使用の取締りが行われるが、地域団体商標制度では、商標権を保有している団体などが差し止め請求や損害賠償請求を行うことになる。酒類の地理的表示制度と地域団体商標制度、あるいは農林水産物等の地理的表示制度と地域団体商標制度は重複して指定を受けることも可能となっている。2種類の指定を受ければ、より強い地域ブランドの確立が可能になる。地理的表示制度と地域団体商標制度の重複指定で強固なブランド価値確立へ図表2 3つの制度の違い農林水産物等の地理的表示(GI)制度酒類の地理的表示(GI)制度地域団体商標制度保護対象(物)農林水産物、飲食料品等(酒類等を除く)酒類(ぶどう酒、蒸留酒、清酒、その他の酒類)全ての商品・サービス登録主体生産・加工業者の団体(法人格の無い団体も可)酒類の産地の酒類製造業者及び酒類製造業者を主たる構成員とする団体農協等の組合、商工会、商工会議所、NPO法人(法人格必要)主な登録要件●生産地と結び付いた品質等の特性を有すること●確立した特性:特性を維持した状態で概ね25年の生産実績があること●酒類の特性が明確であること●酒類の特性を維持するための管理が行われていること●地域の名称と商品(サービス)とが関連性を有すること(商品の産地等)●商標が需要者の間に広く認識されていること品質管理●生産地と結びついた品質基準の策定・登録・公開・生産・加工業者が品質基準を守るよう団体が管理し、それを国がチェック一定の基準を満たす管理機関を設置し、生産基準に定められた酒類の特性を維持するための管理商品の品質等は商標権者の自主管理規制手段国による不正使用の取締り国による不正使用の取締り商標権者による差止請求、損害賠償請求費用・保護期間登録:9万円(登録免許税)更新手続無し(取り消されない限り登録存続)なし出願+登録:40,200円(10年間)更新:38,800円(10年間)※それぞれ1区分で計算※2016年4月1日以降納付されるものに適用申請・出願先農林水産大臣(農林水産省)国税庁長官(国税庁)特許庁長官(特許庁)出典:特許庁「地域団体商標制度」について3つの地域ブランド制度の違いとは? ファイナンス 2020 Dec.9すべての酒類を対象に国税庁長官が指定お酒の地理的表示(GI)が地域活性化に一役買う特集

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