ファイナンス 2020年12月号 No.661
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日EU・EPAで「日本酒」を 地理的表示として保護酒類の地理的表示制度では「日本酒」も国レベルの地理的表示として指定されている。「日本酒」は、秋に収穫された米を使い、気温が低く雑菌が増殖しにくい冬に製造し、春から夏にかけて貯蔵・熟成させ出荷するなど、日本の明確な四季と結びつき発展してきた酒類と言える。貴重な米から製造される特別な飲料として、古来より冠婚葬祭や年中行事の際に飲まれる習慣があり、日本の伝統的なお酒として、日本人の生活や文化に深く根付いている。このような歴史的・文化的背景等を根拠として、日本が長年育んできた日本酒の価値を保全していくため、国税庁は平成27年12月に「日本酒」を地理的表示として指定し、保護している。日本酒と清酒はあまり明確に区別されていないケースも多いが、定義は異なる。海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く「清酒」(Sake)と呼ぶ。一方で「清酒」のうち、「日本酒」(Nihonshu/Japanese Sake)は、原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみを言う。「日本酒」の地理的表示の指定により主に3つの効果が期待される。一つ目は、外国産の米を使用した清酒や日本以外で製造された清酒が国内市場に流通したとしても、「日本酒」とは表示できないため、消費者にとって区別が容易になること。2つ目は海外に対して、「日本酒」が高品質で信頼できる日本の酒類であることをアピールできること。3つ目は海外においても、地理的表示「日本酒」が保護されるよう国際交渉を通じて各国に働きかけることにより、「日本酒」と日本以外で製造された清酒との差別化が図られ、「日本酒」のブランド価値向上を図ることができることだ。国税庁では、「日本酒」の地理的表示が海外でも保護されるよう国際交渉等を通じて働きかけを行っている。たとえば、平成31年2月に発効した日EU・EPAでEUは「日本酒」を地理的表示として保護している。また、令和2年1月に発行した日米貿易協定で米国は「日本酒」の表示の保護に向けた検討手続きを進めることを約束している。国際交渉等を通じ「日本酒」のブランド価値の向上を目指す「日本酒」を地理的表示に指定日本産酒類の輸出促進のため、国際的イベント等におけるプロモーション、海外の酒類専門家の酒蔵等への招へい等により、日本産酒類に対する国際的な認知度や理解の向上に取り組んでいる。日EU・EPAの発効記念式典では、「日本酒」での鏡開きと、日本産酒類の地理的表示のPRを実施した。8 ファイナンス 2020 Dec.

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