ファイナンス 2020年12月号 No.661
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長崎県壱岐市は、九州北方の玄界灘にある壱岐島を中心とした群島にあり、玄武岩層によって長い年月をかけて磨かれた地下水が豊かな地域。壱岐の地下水により発酵が順調に促され、「壱岐」に厚みのある味わいを与えるほか、割水に用いることによりキレの良い飲み口を引き立たせている。また、歴史上で麦を原料とした焼酎は、長崎県壱岐市のものが最も古く、日本における「麦焼酎発祥の地」とされている。鹿児島県では江戸時代以降、さつまいもを広く栽培。単式蒸留焼酎「薩摩」は、原料のさつまいもの産地と焼酎の製造地が同じ鹿児島県のため、良質で新鮮なさつまいもを使用できる。「薩摩」は、華やかで芳醇な香りを持っている。「薩摩」の製造技術は、鹿児島県工業技術センターが中心となり技術開発・普及に当たっているほか、鹿児島大学の焼酎・発酵学教育研究センターにおいてもさつまいも焼酎の研究開発や人材育成を行っている。和歌山県で収穫した梅は、梅干しに加工して食用とするのが主用途であったが、し好の変化により梅干しの需要量が減少し、新たな用途を開拓が課題だった。その中で清酒製造業の閑散時期に収穫ができる梅を原料として梅酒を製造するという発想が生まれ、梅酒の製造が盛んになっていった。また、梅酒及び梅加工食品の原料となることを前提とした梅の栽培方法の研究により、梅の改良等が重ねられた。平成27年には世界農業遺産として認定された「みなべ・田辺の梅システム」(ミツバチによる受粉率の向上、整枝・剪定技術の改善、収穫ネットの利用など)を確立するなど、安定的に梅酒の原料である高品質な梅の栽培が行えるよう栽培技術の開発と蓄積も行っている。単式蒸留焼酎である「琉球(琉球泡盛)」は、原料の米こうじに由来する適度な油分による芳醇な味わいがある。特に、常圧蒸留したものの古酒(3年以上貯蔵したもの)は、黒こうじ菌の酵素により米から生じる成分に由来する甘いバニラ様の香りや松茸様の香り等が調和した、濃厚で奥の深い香りを持っている。琉球泡盛は、容器詰めされた後でも香味成分の変化による熟成が進むことから、消費者自らが「仕次ぎ」と呼ばれる手法により古酒を育てる文化も定着している。熊本県球磨郡及び同県人吉市は、九州中央部の九州山地に囲まれた球磨盆地にあり、日本列島では低い緯度でありながら冬季の平均気温が低く、寒暖の差が大きい。濃霧の日も多く、この環境により、比較的低温での発酵及び適度な環境による貯蔵が可能となり、清涼感のある香味を有する焼酎の製造に適している。単式蒸留焼酎「球磨」は、総じて米由来のまろやかな甘さと清涼感のある香味がある。その中でも、常圧蒸留したものは香ばしさを伴った米特有の香りを持つ。1麦を原料とする最古の焼酎「壱岐」2米由来の香味を特徴とする「球磨」3良質なさつまいもで香り豊かな「薩摩」4仕次ぎにより古酒を育てる 楽しみ「琉球」1梅酒に適した高品質な梅の製造を追求する「和歌山梅酒」蒸留酒(焼酎、泡盛)リキュール(梅酒)和歌山梅酒 ファイナンス 2020 Dec.7すべての酒類を対象に国税庁長官が指定お酒の地理的表示(GI)が地域活性化に一役買う特集

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