ファイナンス 2020年11月号 No.660
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しかし、追加で国債を発行し、資金調達するには時間がかかる。3カ月先の7月以降になる見込みだった。それまでの間は、短期的な資金繰りで乗り切るしかない。更に、コロナ対策として納税の特例猶予なども実施したため、当初想定通りの税収が入ってくることも期待できない。日々の国庫金の受け払いのための資金繰りは、理財局国庫課が担っている。国庫課では、一般会計だけでなく、特別会計(特会)を含めた国庫全体の資金繰りを通常時から効率的に行っている。具体的には、ある会計では資金に一時的な余裕があるが、ある会計では不足している場合には、会計間で資金の融通を行い、それでも足りない場合には、政府短期証券(FB)を発行したり、特会が借り入れを行ったりしている。例えば、多額の国債の償還を毎四半期末に行うための資金は、平準的に調達したり、前年度から調達(前倒債の発行)しているが、これらの資金は国債の償還に充てるまでの間、国庫全体の資金繰りに活用されてる。昨年度は、今年度の国債の借り換えに備え、約40兆円の前倒し債を発行しており、これらの資金は、コロナの感染が拡大する前は、特会の資金繰りに融通するなど国庫全体資金繰りに活用されていた。しかし、補正予算の決定後は、早急に資金が必要となったことから、特別会計(特会)に融通していた資金を返済してもらうことで約40兆円を確保した。それでも合計約57兆6,000億円の補正予算を賄うには不足するため、平成27年の発行以来、5年ぶりとなる財務省証券を6月に発行して補正予算の支出に対応した。新型コロナウイルス感染症対策の補正予算の内訳は、資金繰り対策約15兆5,000億円(1次、2次合計)、特別定額給付金約12兆9,000億円(同)、新型コロナウイルス感染症対策予備費11兆5,000億円(同)などとなっている(図表3)。新型コロナウイル図表3令和2年度の1次及び2次の一般会計補正予算の内訳項目1次補正予算2次補正予算合計1.新型コロナウイルス感染症対策関係経費25兆5,655億円31兆8,171億円57兆3,826億円資金繰り対策3兆8,316億円11兆6,390億円15兆4,707億円特別定額給付金(1人当たり10万円)12兆8,803億円ー12兆8,803億円新型コロナウイルス感染症対策予備費1兆5,000億円10兆円11兆5,000億円中小・小規模事業者等に対する給付金2兆3,176億円3兆9,642億円6兆2,818億円ー持続化給付金2兆3,176億円1兆9,400億円4兆2,576億円一家賃支援給付金ー2兆0,242億円2兆0,242億円地方創生臨時交付金1兆円2兆円3兆円新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療提供体制の整備等)1,490億円2兆2,370億円2兆3,860億円“GoTo”キャンペーン事業1兆6,794億円ー1兆6,794億円雇用調整助成金等690億円4,519億円5,209億円その他2兆1,385億円1兆5,250億円3兆6,635億円2.国債整理基金特別会計へ繰入1,259惚円963億円2,222億円3.既定経費の減額ー▲20億円▲20億円合計25兆6,914億円31兆9,114億円57兆6,028億円(注1)計数はそれぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは一致しないものがある。(注2)「資金繰り対策」は、2次補正予算については、国債整理基金特別会計への繰入(日本政策投資銀行の保有する交付国債の償還4,432億円)を含む。(注3)「雇用調整助成金等」については、一般会計財源のほか、労働保険特別会計財源により、当初予算で35億円、1次補正で7,640億円、2次補正で8,640億円が措置されており、合計で2兆1,525億円となる。出所:財政制度等審議会財政制度分科会(令和2年10月1日開催)資料「財政総論」より4 ファイナンス 2020 Nov.

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