ファイナンス 2020年11月号 No.660
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テレワークがワークライフバランスに与える効果・テレワークは、ICTを活用することによって、場所や時間にしばられない柔軟な働き方を実現するものであり、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークの3形態に分けられる。2019年時点でのテレワークの導入状況は20.1%となっている(図表7)。・テレワークの拡大により、家事に従事する時間が増えた労働者は男女ともに過半となっており、男性の家事への従事時間の増加は、女性の就労継続にも効果を持つことが期待される(図表8)。また、子供のいる女性を部下に持つ管理職は、在宅勤務が部下である女性の活躍を促す手段として有効と考えている(図表9)。テレワークの拡大は、夫婦間の家事・育児の分担を見直す契機となり、ワークライフバランスの改善に寄与することが期待される。図表7 テレワークの導入状況12.19.611.49.111.316.113.213.819.020.12520151050(%)2010201120122013201420152016201720182019(年)図表8 在宅勤務を通じた家事にかける時間の変化(注)「在宅勤務で、家事や暮らしにかけられる時間が増えたか」   という質問への回答を集計10080604020011.714.417.520.144.743.543.840.133.032.630.8 30.78.16.85.06.82.62.72.92.3男性20代30代40代50代19.427.632.636.951.547.645.944.023.018.416.214.94.94.33.73.61.32.11.50.6女性20代30代40代50代(%)そう思うあまりそう思わないややそう思うどちらとも言えないそう思わない図表9 男性管理職から見た子を持つ女性の在宅勤務の有用性(注)「在宅勤務等の働き方の定着は、子育てしながら働く女性の部下の活躍を引き出し組織の成長につなげる上で有効だと思うか」という質問への回答を集計そう思う25.5どちらかと言えばそう思う58.6どちらかと言えばそう思わない13.1そう思わない 2.8(%)(出典)総務省「通信利用動向調査」、野村総合研究所「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う在宅勤務等に関する調査」女性のテレワークに係る課題・女性によるテレワークの活用を考える際には、女性の従事する職業には、販売業や保健医療従事者をはじめとする専門的・技術的職業など、テレワークが困難な職業に就く人数が過半を占めていることに留意する必要がある(図表10)。・実際に、新型コロナウイルス感染症への対応下においても「テレワークを行わない理由」を尋ねると、「テレワークで行える業務ではない」が半数を超えており、テレワークを実施・拡大できない業務も多い。一方で、「テレワーク制度が整備されていない」が34.6%、「テレワークのためのICT環境が整備されていない」が14.6%など、組織の環境整備によって対応できると考えられるケースも一定程度存在する(図表11)。ハード・ソフトウェア面での対応、業界全体での制度の確立など、可能な取組みを進める必要がある。・なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いテレワークを活用した労働者のうち、「働きながら子供の世話をしなければならない」点を困りごととして挙げる割合がテレワークの長期化につれて増加しており、特に女性にとって大きな課題となっている(図表12)。テレワークの拡大だけでなく、育児に伴う負担が過度に生じないようにすることも、女性の就労継続にとっては重要であることがうかがわれる。夫婦間の意識や行動を変えていくことによって、夫婦間の家事・育児の分担を見直すとともに、保育・教育サービスの利用可能性を確保することも重要と考えられる。図表10 生産人口に属する女性の職業内訳125332383722576463530164743販売保安職業農林漁業生産工程輸送・機械運転建設・採掘運搬・清掃・包装等サービス職業専門的・技術的職業事務管理的職業分類不能の職業(万人)図表11 テレワークを行わない理由(複数回答)テレワークで行える業務ではないテレワーク制度が整備されていないテレワークのためのICT環境が整備されていないテレワークを行う場所がない会社がテレワークに消極的で、実施しにくい押印や書類準備など、事務処理に出社が必要特定の機材や機器を扱うために出社が必要テレワークをする必要性を感じていない上司がテレワークに消極的で、実施しにくいテレワークを行うための手続きが煩雑テレワークでは集中して作業できない対面の会議・打ち合わせが多いその他6040200(%)図表12 育児負担をテレワークでの課題と回答した割合の変化31.942.128.233.342.956.3(注)テレワークでの困りごととして「働きながら子供の世話をしなければならない」を挙げた割合を集計60504030201002020/4全体男性女性2020/52020/42020/52020/42020/5(%)(出典)総務省「労働力調査」、パーソル総合研究所「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2020 Nov.75コラム 経済トレンド 77連載経済 トレンド

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