ファイナンス 2020年11月号 No.660
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コラム 経済トレンド77大臣官房総合政策課 調査員 田村 怜/大井 克彰女性の労働とテレワーク本稿では、テレワークの拡大が女性の労働参加にどのような影響をもたらすかについて考察する。女性の労働参加・日本の総人口は2008年をピークに減少に転じているが、労働力人口は1990年代後半から減少基調となった後、2014年に再度増勢に転じている。その要因のひとつとして、女性の労働参加率が上昇したことが挙げられる(図表1)。・女性はかつて結婚・出産を機に退職を選択する割合が高く、その後就労に復帰しないケースも多かったとみられるが、産休・育休や短時間勤務の仕組みの整備、待機児童対策などを背景に、有配偶者を中心に労働力率が上昇している(図表2)。・出産後の母親の就業状況の変化をみると、出産後に勤めていた会社を退職する人が多いものの、子どもの年齢があがるにつれ再び就労する傾向にある。なお、その多くは非正規雇用を選択している(図表3)。図表1 労働力人口推移19601970198019902000201020191953080007000600050004000300020001000(万人)男性女性図表2 配偶関係・年齢階級別女性の労働力率の推移010090807060504030201015~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳50~54歳55~59歳60~64歳65歳以上(%)有配偶(2012年)未婚(2012年)未婚(2019年)有配偶(2019年)図表3 子と同居する母の就業状況の変化27.026.225.825.024.623.623.624.125.138.040.938.534.029.525.719.716.112.25.919.37.17.27.07.06.96.65.64.74.44.723.826.632.938.442.648.453.958.064.037.71.21.50.30.20.21.80.80.90.6出産一年前出産半年後1歳6か月2歳6か月3歳6か月4歳6か月5歳6か月小学1年生小学2年生小学3年生01020304050607080901000.3(%)勤め(常勤)自営業・家業、内職、その他無職不詳勤め(パート・アルバイト)(出典)総務省「労働力調査」、厚生労働省「第9回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」女性のワークライフバランス・非正規雇用を選択している理由をみると、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」が一番多く、女性については男性と比較して「家事・育児・介護等と両立しやすいから」を選択している割合が多い。一方で、正規の職員・従業員の仕事がなく不本意に非正規雇用に就いている割合は有配偶者の女性で4.8%となっている。女性の中には、家事・育児・介護との両立の観点から、柔軟な働き方を希望し、自ら非正規雇用を選択する人が多いと言える(図表4)。実際に、共働きの夫婦においても、男女の家事・育児時間には大きな差がある(図表5)。・夫の平日の家事・育児時間は、出産前後において妻が就業を継続するかどうかに関係しているとのデータがある(図表6)。夫婦間で、家事・育児等の分担がより一層行われることは、女性の就業継続にプラスの効果があるだろう。そのためには、労働生産性を高めて勤務時間を縮減するとともに、時間や場所にしばられない柔軟な働き方を選択できる環境を実現することが望ましい。図表4 非正規雇用者が現職の雇用形態についている理由24.729.327.931.214.012.726.621.91.31.125.819.13.64.14.917.912.54.64.15.015.318.04.88.623.422.36.19.4女性(有配偶者)女性男性男性(有配偶者)自分の都合のよい時間に働きたいから100806040200(%)家事・育児・介護等と両立しやすいから専門的な技能等をいかせるから家計の補助・学費等を得たいから通勤時間が短いから正規の職員・従業員の仕事がないからその他図表5 夫婦と子どもの世帯の1日当たり家事・育児総平均時間1615275211019614456共働き世帯夫が有業で妻が無職世帯家事育児妻夫妻夫5004003002001000(分)図表6 夫の平日の家事・育児時間別の妻の出産前後の継続就業割合72.566.162.054.564.113.78.58.49.19.313.723.628.833.325.41.80.83.01.24時間以上~2~4時間未満2時間未満家事・育児時間なし総数同一就業継続転職離職不詳100806040200(%)(出典)総務省「労働力調査」「社会生活基本調査」、厚生労働省「第7回21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)」74 ファイナンス 2020 Nov.連載経済 トレンド

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