ファイナンス 2020年11月号 No.660
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から80億円で作れます。有償資金協力、無償資金協力を組み合わせ、ADB(アジア開発銀行)その他のドナーとも協力し、また、民間企業の参画も求めることで、そんなに無理なことではないと思います。カ.多様なパートナーとの取組最後にもう1点だけ申し上げると、我々はいろんなドナーやパートナーとの協力がとても重要だと思っています。最近の例はナイジェリアにおけるポリオの撲滅です。これは、ローン・コンバージョンといって、我々がナイジェリア政府にお金を貸し、その資金で政府がポリオの予防接種を実施します。予め設定した予防接種の条件をナイジェリア政府が達成したら、そのローンの返済はゲイツ財団が肩代わりしましょう、という仕組みです。つまり、JICAの信用と現場力とを組み合わせて、資金を動員しようというものです。これはパキスタンでもやっております。国際社会は、やはり未だにP5(国際連合安全保障理事会の常任理事国である米・英・露・仏・中の5か国)の影響力が強いのです。国際機関にインプットしていくよりは、国際機関の外で協力するほうが有効ではないかと思います。そうした観点で、例えば、赤十字国際委員会(ICRC)・JICA協力とか、日本とイスラム開発銀行との協力などをやるほうがいいのではないかと思います。そのほうが現地の国民には、日本、あるいはJICAという形が見えやすいのではないかというのを考えていて、その意味でも、ゲイツ財団とのローン・コンバージョンというのは、一つのモデルケースと思っております。ご清聴ありがとうございました。講師略歴北岡 伸一(きたおか しんいち)独立行政法人 国際協力機構 理事長東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学法学部教授、東京大学教授、国連代表部次席代表を経て、2012年東京大学名誉教授。2012-2015年国際大学学長、2015年より国際協力機構(JICA)理事長。小泉首相の「対外関係タスクフォース」メンバー、安倍首相の「安全保障と防衛力に関する懇談会」座長代理、外務省「日中歴史共同研究」日本側委員座長、「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」座長などを歴任。著書に『清沢洌―日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党一政権党の38年』(吉野作造賞受賞)などがある。近著は、『世界地図を読み直す』、『明治維新の意味』など。 ファイナンス 2020 Nov.69夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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