ファイナンス 2020年11月号 No.660
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名簿をベースに抽出された法人であり、資本金、出資金又は基金の額が1千万円以上の法人(単体ベース)となる*10。本稿の分析対象に含まれる企業は、日本国内に本店を有する企業である(金融業、保険業を除く)。表2 分析対象企業の分類業種区分従業員数区分製造業1,83110人未満220建設業24710~100人967不動産業286100~500人1,528卸売業464500~1,000人712小売業2361,000~5,000人862情報通信業3345,000~10,000人139運輸・郵便業25610,000人以上87他サービス業724他非製造業137計4,515(出所)景気予測調査及び法人企業統計より作成。3.分析と結果3.1  人手不足企業グループの従業員確保の取組みについてまず、景気予測調査の「従業員数判断」(上記2.1(1))を活用して、回答で「不足気味」を選んでいる企業(人手不足企業グループ)と、回答で「適正」を選んでいる企業(適正企業グループ)に分けた。そして「今年度における従業員確保の取組」(上記2.1(2))を*10) 法人企業統計の年次別調査は、すべての営利法人等が対象となっている。*11) 企業経営者が選んだ選択肢は重要度の高い順に1~3位までわかるが、ここでは企業経営者がどの選択肢を最も重視しているかという点を分析するため、重要度1位で選択した場合のみをカウントしている。用いて、それぞれのグループが従業員を確保するためにどのような取組みを行おうとしているのかを確認する。その狙いは、企業の人手不足感の違いによって、企業経営者が選ぶ選択肢に何らかの傾向があるのかを確認することにある。この点は、景気予測調査の集計結果から直接はわからないが、個票をクロス集計することで明らかにすることができる。その結果が図1である。結果をみると、「従業員確保の取組」の選択肢が10択あるうち最も回答の割合が高い選択肢は、どちらのグループも「人材育成の強化」であり、人手不足企業グループよりも(25.4%)、適正企業グループの方が割合が高い(37.3%)。次に割合が高い選択肢はどちらのグループも「賃金(初任給を含む)の引上げ」となっている。こちらは、人手不足企業グループの方が(24.3%)、適正企業グループよりも賃上げを選択した割合が高くなっている(19.2%)*11。3.2  人手不足企業グループにおける賃上げ意欲が高い企業の特徴について次に、人手不足の企業で賃上げ意欲の高い企業はどのような財務上の特徴があるのか、具体的には図1の人手不足企業グループのうち、「賃金(初任給を含む)の引上げ」を最も重要な取組みに選んだ企業(24.3%)の財務上の特徴を確認する。分析にあたり、人手不足企業グループだけを取り上げ、「賃金(初任給を含む)の引上げ」を最も重要な図1 人手不足感の有無別の従業員確保の取組み2.0(注1)従業員数判断の回答が「過剰気味」、「不明」または無回答の企業を除く。(出所)景気予測調査より作成。24.319.24.75.125.437.315.17.59.55.83.28.610.35.46.92.92.12.02.6100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%不足気味(n=1,249)適正(n=3,056)賃金(初任給を含む)の引上げ福利厚生の充実人材育成の強化採用要件の柔軟化正社員登用制度、多様な正社員制度の活用テレワーク・フレックスタイム制度の導入業務プロセスの見直し定年退職者の再雇用・定年延長外国人材の受入れその他 ファイナンス 2020 Nov.57シリーズ 日本経済を考える 106連載日本経済を 考える

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