ファイナンス 2020年11月号 No.660
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街diary」(文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞やマンガ大賞2013を受賞した人気コミックの実写映画化。「湘南を舞台に、異母妹を迎えて4人となった姉妹の共同生活を通し、家族の絆を描く。」)で日本アカデミー賞作品賞、監督賞に加え最多12部門受賞。2014年、独立。「受注しない」という妙なルールを作り、自分たちで企画を立てて売ることにしたという。「いまは、監督が自分で企画を立てて持ち込むこと自体が減ってきているんです。企画書書いても、それに対してお金が払われないから。」、「そういうことをしていると、オリジナリティーのある企画は生まれてこない。…だから、企画書にお金を払ってもらって、事務所を回していくことにしたんです。」と語る。2018年、樹木希林の生前に上映された最後の作品となった「万引き家族」は、カンヌ国際映画祭で、今村昌平監督の「うなぎ」以来、21年ぶりのパルム・ドール受賞など内外で受賞多数、2019年には、「万引き家族」が日本映画としてインドで初めて商業公開されたという。2019年には母と娘の間に隠された真実をめぐる物語を、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュの共演、全編フランスで撮影した日仏合作映画『真実(原題:La Vérité)』が日本映画初のヴェネチア国際映画祭コンペティション部門のオープニング作品となる。(7)新海誠監督(1973年~)「デジタルの世代の映像作家」新海誠監督。ゲーム開発会社在籍中に『彼女と彼女の猫』(2000年))を発表。「CGアニメコンテスト」でグランプリ。それが「以降の日本のCGアニメの潮目を変えた」とも言われる。下北沢の座席47の映画館で上映したときは客が全然来ず、夜の上映会にスーツを着た新海監督がチケットを買ってから「『彼女~』を作った新海というものなんですが…。」とやってきた回は、結局、お客さんは他に誰も来ず、新海監督だけだったというが、それでも、当時から「自己プロデュース力をもって、常に自分をアップデートするにはどうするか考え続ける姿勢」があったという。脚本、作画から美術、編集、演出、監督までほぼ一人でこなして作り上げたフル・デジタル・アニメ『ほしのこえ』(2002年)の予告編を見たプロデューサーが新海監督に制作中の生活費を負担するので会社を辞めて制作に専念してもらうと提案、8か月で一気に完成。予告編をかけたら、客から「あれはなんですか?いつ公開ですか?」と反応。「蓋を開けてみたら、朝から劇場前は大行列」「1か月の上映期間中、連日満員」だったという。「絵コンテ、撮影、美術、編集と全部一人で」やった初の劇場映画『雲のむこう、約束の場所』(2004年)がロングラン記録、毎日映画コンクールアニメーション映画賞他受賞。「初恋の純粋さ、いつか訪れる別れの切なさを描いた連続短編集」『秒速5センチメートル』(2007年)で第1回アジアパシフィック映画賞(アニメーション映画賞)他を受賞。」2011年に公開された、地下世界アガルタを舞台に展開される冒険ファンタジー『星を追う子ども』で第八回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞受賞するなど「君の名は」のヒット前から中国でも知られていて、2015年に中国各地で開催した新海誠監督のイベント、南京の会場には若者を中心に2千人も集まったという。新海監督が「『観客を笑わせることも、泣かせることも、長編作品の時間のコントロールも、今ならできるのでは』という思いを胸に長編アニメーション制作に再び挑んだ」2016年のアニメ「君の名は」が日本で興行収入1位、歴代でも宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に次ぐ2位。中国でも「週末興収ランキングで初登場1位を獲得」、「初週の成績は日本、台湾、香港、タイに続き、アジア5冠を達成」。最終的に95億円の興行収入は中国での日本アニメの興行収入記録を更新。監督自身の原作もミリオンセラー。映画の舞台となった聖地が人気に。(2016年国内興行収入1位「君の名は」の聖地、Cafe La Boheme新宿御苑店。主人公の男の子がアルバイトをしていたカフェのモデルだという)50 ファイナンス 2020 Nov.SPOT

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