ファイナンス 2020年11月号 No.660
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じゃん?…カンヌは期待したもんねえ。『これで2冠だ』と思ったね。でもまた、獲れると思うときには獲れない。」、「あれはね、たぶんね、『菊次郎の夏』で賞くれなかったから、悪いと思ったんじゃねかな。フランスの評判悪くなったらいけねえと思ったんじゃない?」。更にレオンジドヌール勲章(コマンドール(騎士団長))(2010年)も受賞。2016年、黒澤明監督以来32年ぶりのレオンジドヌール勲章(オフィシェ)も受賞。その叙勲を行った元フランス文化大臣のジャック・ラングは「大胆で独創的な創造性により生み出された作品が、芸術ジャンルの限界をやすやすと乗り越え、演劇・テレビ・映画・文学などの約束事を変革し、現代のアートシーンに影響を与えてきた」、「あらゆる形態の大衆芸術の発展への熱心な関わりによって、フランス、日本そして世界中で名を馳せた型にはまらない完全無欠のアーティストとして存在していることに、オマージュを捧げたい」と称えたという。2018年には旭日小綬章受章。(6)是枝裕和監督 (1962年~)2019年トロント国際映画祭、「Japan Film Night」での是枝浩和監督、提供:国際交流基金テレビのドキュメンタリー番組の制作出身。アルバイトで進研ゼミの「赤ペン先生をやりながら散々文句を言ったんです。『この問題設定がおかしい』とか『文章の選び方がおかしい』といちゃもんつけてたら『じゃあ、作る側に回れ。』って言われて、「面白かった」、「大切なのは、『答え』ではなく『問題』」だ、と語る是枝監督は、大学卒業後、テレビマンユニオン(「大陸横断ウルトラクイズ」や「世界不思議発見」の制作会社)に入る。最初の社長に最初に「世の中にはクリエイティブな仕事とクリエイティブでない仕事があるのではない」、「その仕事をクリエイティブにこなす人とクリエイティブにこなさない人がいるだけだ。そう考えて仕事にあたりなさい。」と言われたという。お金をかけて海外ロケまでやったのに放送できないものをつくってしまい、その番組のレギュラーのチームから離れ、「みなが『是枝はもうやっていけないな。』と思っているのがわかると、僕は天の邪鬼で、負けた奴と思われるのが嫌で、「殺すリスト」というのを作ったんです。」、「こいつらを殺してから辞めようと(笑)」。「その時期に、自分で企画書を作って放送局に持って行って実現したのが僕のデビュー作です。」という。それが1991年、「生活保護に関するドキュメンタリーで、放送局のプロデューサーに直接持ち込んだら『生活保護について全然知らないから、見てみたいからやってごらん。』と言われて、何のキャリアも問われずに一本やらせてもらった」番組、『しかし・・・・・・福祉切り捨ての時代に』でギャラクシー賞優秀作品賞受賞。「日本の映画界は、僕がデビューしたあとも随分変わった。お客さんが監督で作品を観なくなった。監督で企画が動くことが少なくて、多くのお客さんが見るものは監督主導で作られている作品ではないんです。原作の漫画があって、キャストが決まって、脚本が決まって、それから、監督は誰にする?この時期に空いている人は?という流れのものが大量生産されている。そこと、たとえば、『カンヌ国際映画祭』に出る映画と、完全に二極化しているんです。」という。1995年、初監督映画「幻の光」(新人の江角マキコ主演。「子供の頃、祖母が失踪し、幸せな生活を送っていたはずのある日、夫が自殺した女の「“生と死”“喪失と再生”を描いたドラマ。」)がヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影賞)などを受賞。2004年、父親の違う子供4人を母親が置き去りにした事件を元に構想から15年で映画化した「誰も知らない」で当時14歳だった柳楽優弥がカンヌ国際委映画祭で日本人初・史上最年少で男優賞受賞。子供の取り違え事件を扱った福山雅治主演の「そして父になる」は、2013年カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞。2015年「海 ファイナンス 2020 Nov.49サヨナラ、サヨナラ、サヨナラSPOT

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