ファイナンス 2020年11月号 No.660
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税)による歳入の増加を充てることとした。【グラフ6】これまで、海津市では、ふるさと納税で集めたお金を海津市ふるさと応援基金に積み立てていたが、集めたお金を基金で積み立てているだけでは意味がない。お金は使って初めて意味がある。具体的な施策としては、定住奨励金の増額と住宅金融支援機構との提携(後述)等をこの予算枠で実現しようとしている。グラフ601,0002,0003,0004,0005,0006,000(万円)H25H26H27H28H29H30R1R2(9/10時点)3 海津市の課題と具体的な取組み事項(地方創生関連)● 海津市の課題市長以下、海津市のどの人に会っても、海津市の課題は人口減少と少子高齢化だと言う。海津市の人口は、国勢調査ベースで平成7年の41,694人がピークでその後減少に転じ、平成27年では35,206人となっており、本年度の国勢調査ではさらに減少が進む見込みとなっている。高齢化率は、平成27年時点で29.1%であり、合計特殊出生率は、平成30年度に全国(1.43)よりも圧倒的に低い0.90となっている。都市部と比べて、地方は出生率が高いと漠然と考えていたので、この数値には驚かされた。15年前の合併当時は、1年に400人ほど子供が産まれていたようだが、今は120人前後となっており、短い期間に少子化が急激に進んでいることがわかる。人口減少と少子高齢化は、経済問題や社会問題が絡む大変に根深い問題で、一足飛びの解決はできない。そして、大庫直樹さん(ルートエフ(株))が主張しているように、地方創生とは人口問題というよりも経済問題である。市長等と相談し、まずは移住・定住人口に焦点をあてるよりも、その前段階とも言える関係人口の創出に力を入れることとした。関係人口は、移住・定住した「移住・定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々をさす言葉である。海津市は、東海地方でもあまり知名度が高くなく、ましてやそれ以外の地域の出身者には、ほぼ無名である(自分も、海津市に赴任が決まったと言われたとき、おもわず「それ何県ですか?」と聞いてしまった)。まずは、関係人口を増やし、海津市のファンを増やし、市外から海津市にカネを落としてもらおうということになった。● ふるさと納税まずは、関係人口増加策の1つとして、ふるさと納税を通じて海津市にかかわってくれる人を増やすことに取り組んだ。八幡浜市に赴任していた今岡さん(H22本省)や、亀岡市に赴任していた仲山さん(H23本省)からも、色々とアドバイスをいただいた。先に示したグラフ6が海津市へのふるさと納税額の推移だが、これまであまり積極的に取り組んでこなかったため、平成25、26年度はわずか4万円、169万円であった。自分が赴任する直前の平成30年度から力を入れだし、その年は1,709万円まで伸びたところであった。それを、令和元年度には2,656万円、令和2年度には10月14日時点で5,260万円にまで伸ばすことができた。やったことは、大変にシンプルでどこの自治体でもできるのではないかと思う。(1)ふるさと納税の窓口の増加ふるさと納税は、「ふるさとチョイス」や「楽天ふるさと納税」「ふるまる」「ふるなび」等々の様々なホームページからすることができるが、自分が赴任するまで、海津市は「ふるさとチョイス」からしか、ふるさと納税の申し込みができなかった。ふるさと納税の最大手のホームページの1つのため、それだけあればいいと思っていたようだが、それは明確な間違いである。楽天が一番典型的だが、楽天ユーザーは「楽天ふるさと納税」からしかふるさと納税をしない(自分も楽天ユーザーなのでよくわかる)。なぜかというと、そうでないと楽天ポイントが付かないからである。他のサイトも似たようなポイントを実施しているので、それぞれのサイトに別々のポイントユーザーが住んでいる。そのため、ふるさと納税を増やすためには、兎に角窓口を増やさねばならないのだ。そのため、自分の赴任後早急に窓口を増加させ、現在では5つのサイトから可能となっている(今事務年度にも、さらに2つ追加予定)。32 ファイナンス 2020 Nov.

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