ファイナンス 2020年11月号 No.660
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的には、それはそれでいいのではないかと思っている。色々な市役所業務に携わる中で、国とは違う基礎自治体の輪郭がなんとなく掴めてくるからだ。)。● 海津市財政の概観赴任後すぐ、財政係から、「海津市の財政は結構良くないんですよ。毎年の予算編成に苦慮するぐらいで・・・」と打ち明けられたが、市の予算書や決算書をみても、当初は何がどう良くないのか、ピンとこなかった。市報かいづに載っている健全化判断比率を見ても、財政再生基準はおろか、早期健全化基準までもまだ余裕があった【グラフ1】(後から気づいたことだが、この健全化判断比率は本当に財政が悪くならないとひっかからない。それに、この数値が海津市よりも悪いが、財政的には余裕がある市町村もある)。【グラフ2、3】は、同じく市報かいづから抜粋した、平成30年度の海津市一般会計の歳入歳出決算である。これを見ると、歳入決算額は155億で歳出決算額は148億であり、およそ7億円の黒字である。「なんだ黒字じゃないか。財政いいじゃないか。」と当初の自分は思った。この市報を見た市民の方も、そう思ってしまうと思う。ところが、歳入についてよく見ると、繰入金(2.98億円)と繰越金(7.37億円)が計上されている。前者は、歳入不足により財政調整基金等(後に補足説明)を取崩したもので、後者は前年度までの会計の余りを繰り越したもの(あけすけに言えば、第2の財政調整基金のようなもの)である。つまりは、市税収入や交付税収入といった「フロー」が記載される歳入の項目に、「ストックを切り崩したもの(繰入金)」と「ストックそれ自体(繰越金)」が計上されているのだ。単年度収支から、基金の取崩しや繰越金の増減に加え、繰越明許費等を除くことで、「その年の歳入で、その年の歳出を賄えているか」を見ることができる「実質単年度収支」がわかる。実質単年度収支でみるグラフ1〇平成30年度決算に基づき健全化判断比率を算定したところ、下表のとおり、いずれの指標についても早期健全化基準を下回ります。(単位:%)①実質赤字比率②連結実質赤字比率③実質公債比率④将来負担比率健全化判断比率--10.562.4早期健全化基準13.2918.2925.0350.0財政再生基準20.0030.0035.0(参考)平成29年比率--10.966.5※①②については、実質赤字額および連結実質赤字額がないため「-」を記載しています。※健全化判断比率のいずれかが早期健全化基準(市の財政規模等により算出)以上の場合は「早期健全化段階」となり、自主的な改善努力による財政の健全化を図らなければならず、財政健全化計画の策定、外部監査の要求の義務づけ、実施状況の議会報告が必要となります。※健全化判断比率のいずれかが財政再生基準以上の場合には、「財政再生段階」となり、国等の関与による確実な再生を図らなければならず、財政再生計画の策定が必要となります。グラフ2一般会計 歳入決算額 155億4,646万1千円市税4,1514,22826.7%繰入金298,0461.9%依存財源9,672,04562.2%自主財源5,874,41637.8%諸収入等594,3153.8%繰越金737,3764.8%分担金及び負担金93,4510.6%(単位:千円)地方交付税4,851,42331.2%市債1,140,1007.3%国庫支出金1,380,9418.9%県支出金1,230,5787.9%地方消費税交付金等797,0525.1%地方譲与税271,9511.8%グラフ3一般会計 歳出決算額 148億4,756万1千円目的別歳出決算額(単位:千円)総務費1,671,17711.3%民生費3,534,65523.8%衛生費1,207,4638.1%労働費23,7820.2%農林水産業費682,6964.6%商工費302,3192.0%土木費953,0276.4%消防費569,7403.8%教育費1,753,51011.8%公債費1,552,65110.5%諸支出金2,468,61816.6%議会費127,9230.9% ファイナンス 2020 Nov.29地方創生の現場から【第9回】

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