ファイナンス 2020年11月号 No.660
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発、情報ネットワーク等の『ソフト』インフラ分野への集中的で思い切った資金投入による大胆かつスピーディーな政策転換が求められている。最後に、持続可能な経済発展と完全雇用の確保は、こうした目標達成の手段にすぎないことを明記しておこう。」この論考にコメント(「ハワイと沖縄」)したスミダ・ケンジ(東西センター前総長(当時))は、民間企業を引き寄せ、やる気を起こさせるような環境の創出への確固たる政治的意思、大学レベルでの沖縄の教育制度の強化、を強調。そして、「沖縄のイメージの改善」(「太陽とビーチ」の強烈なイメージで、ビジネスをするところではないと思われることへの改善)を指摘しているのが印象深い。マーケティング戦略として、沖縄の独特な優位性と遺産を内外両にらみで印象づけ、沖縄そのものが常に「高い質」というイメージと結びつくような努力をすべき、というのだ。夢を語るとすれば、現在、整備が進められている櫛状道路を活かしたMICEで、例えば、地勢的重要性を象徴するような、シャングリアダイアローグ、あるいは、ダボス会議などのような安全保障・国家戦略に係るシンポジウムの開催なども構想したいものだ。(なお、本文の内容については、元となる文書の作成において、おきなわ公庫理事大貫裕二氏に貴重なコメントを多数頂戴したほか、業務統括部や調査部の関係者に多大なご協力を得ている。記して感謝したい。ただし、ありうべき誤りなど文責は筆者にある。)プロフィール渡部 晶(わたべ あきら)沖縄振興開発金融公庫副理事長1963年福島県生まれ。87年京都大学法学部卒、大蔵省(現財務省)に入省。福岡市総務企画局長、財務省地方課長兼財務総合政策研究所副所長、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)などを経て、17年6月から現職。「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラムを掲載中。出身の福島県いわき市の応援大使を務める。(参考)沖縄関連の拙稿〇財務省広報誌ファイナンスへの寄稿・ 人口減少社会における地域活性化に係る諸機関の連携とそのガバナンスについて(試論)~沖縄公庫の実践例を踏まえて(2019年10月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201910/index.html・ 「魅せる沖縄」の今後~沖縄経済の現況を踏まえて(2019年5月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201905/index.html・ 沖縄振興開発金融公庫による沖縄振興の取り組みについて(2018年9月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201809/index.html・ 沖縄科学技術大学院大学(OIST:Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University)について(2017年9月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201709/index.html・ ライブラリー ~ 浅野 誠 著:『魅せる沖縄 私の沖縄論』(2019年2月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201902/index.html・ ライブラリー~樋口耕太郎著:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(2020年9月号)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202009 /202009j.pdf〇毎日デジタル(有料記事)「素顔の沖縄けいざい」(2017年10月~2018年9月 月1回連載 計12回)https://mainichi.jp/premier/business/素顔の沖縄けいざい/〇月刊コロンブス(東方通信社刊)・2019年3月号「読書の時間」(書評):「未来経済都市沖縄」・ 2020年8月号「読書の時間」(書評):「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」(各ホームページからの引用は、2020年9月25日に確認・引用したものである。)(注) 本稿脱稿後、「地元を生きる 沖縄の共同性の社会学」(岸政彦・打越正行・上原健太郎・上間陽子著 ナカニシヤ出版 2020年10月)に接した。沖縄について社会学的観点からの優れた研究をされてきた方々の重要かつ必読の労作である。いずれの章も重要であるが、本稿との関係では、「第1章 沖縄の階層と共同性」(上原健太郎氏執筆)がこれまでの沖縄経済に関する研究の成果も整理していて必見だろう。また、上原氏は、この章の最後で、安藤由美氏の論考から「都市、階層・構造、家族、ジェンダーといった沖縄内部の差異化・構造化の観点から切り込む研究の圧倒的な不足」との指摘を引用する。拙稿で提起した、「社会開発」の視点の再評価と、問題意識としてつながるものだと思う。筆者近影(フレディ(1歳9か月)と)26 ファイナンス 2020 Nov.新型コロナウイルス感染下の沖縄経済の状況及び今後の中長期的な課題について(下) SPOT

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