ファイナンス 2020年11月号 No.660
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られていること・早期の経済回復を実現するとともに、将来世代への責任も念頭に置きながら財政の持続可能性を確保していくことも重要な課題となること・デジタルトランスフォーメーションの推進や人的資本への投資を通して、今回の危機を生産性を高めるチャンスへと変えるべきであること・災害リスクファイナンス・保険について、日本は作業部会の共同議長として引き続き取組に貢献することや、パンデミックリスクを今後の作業に取り込んでいくべきこと等を述べられた。(2)財務大臣声明会合の後半に「新型コロナウイルスのパンデミックの軽減及び回復に係るAPECバーチャル大臣声明」が全エコノミーによって異論なく承認された。財務大臣声明の要旨は以下の通り。(世界経済及び地域経済)新型コロナウイルスのパンデミックへの迅速な対応を支援し、強固で、持続可能で、均衡のとれた包摂的な回復へ向かうための全ての利用可能な政策手段を引き続き使用。長期の強靭な発展及び将来の資金需要を支えるため、財政の持続可能性及び透明性を改善することを強調。この点における国際金融機関の取組の重要性を認識。(財政・金融政策)APECエコノミー間での強固で持続可能な経済回復の確保に向けた、協調された多国間協力を奨励。(デジタル化)新型コロナウイルスのパンデミックが経済のデジタル化を加速させ、多くのビジネスの存続にとって重要となったことを認識。(災害リスクファイナンス・保険)災害リスクファイナンス・保険の取組を継続するとともに、パンデミックを災害リスクファイナンス・保険の取組に加える可能性を検討。3関連会合(1)ABACとの対話ビジネス界とのつながりが強いことがAPECの特徴であると上述したが、例年財務大臣会合中あるいは前にABACと財務大臣の対話が開催されている。今回は財務大臣会合の直前にバーチャル会議形式で開催された。対話の中でABACからは財務大臣宛てに提出された提言に基づき、中小零細企業に対する流動性供給の確保やデジタル金融包摂促進のためのICTインフラ整備のほか、ESG(Environment, Society and Governance)投資に関してAPEC地域に受け入れ可能なタクソノミーの形成等について説明があり、多くのエコノミーが強い関心を示した。(2) 災害リスクファイナンス・保険作業部会会合災害リスクファイナンス・保険とは、自然災害が起こった際に迅速かつ効果的に復旧・復興するため、事前に財政負担を明確にした上で財政面での備えを強化する仕組みや、万一生じる大規模な被害を補填するために災害リスクに対して保険をかけておく仕組みのことである。アジア太平洋地域は自然災害が多く、域内には既に緊密なグローバルサプライチェーンが構築されていることから、巨大災害に見舞われた場合には、地域全体の経済活動に与える影響が極めて大きい。このため、災害リスクファイナンス・保険のメカニズムを発展させることは重要であり、日本はフィリピンと16 ファイナンス 2020 Nov.SPOT

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