ファイナンス 2020年11月号 No.660
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1はじめにアジア太平洋地域は世界人口の約4割、貿易量の約5割、GDPの約6割を占める重要な地域である。APECはアジア太平洋地域にまたがる21の国と地域(エコノミー)が参加する経済協力枠組みであり、1989年に創設された。APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化・円滑化や地域経済統合の推進、経済・技術協力等の活動を実施している。また、APECビジネス諮問委員会(ABAC)がビジネス界の重視する課題を首脳に直接提言する等、ビジネス界と密接に連携していることがAPECの特徴の1つである。APEC財務大臣会合に関しては、1994年に第1回会合が開催されて以来、これまで26回にわたって開催され、声明が毎回発出されている。2財務大臣会合の概要2020年のAPEC議長国であるマレーシアのもと、9月25日(金)に第27回APEC財務大臣会合がバーチャル会議形式で開催され、我が国からは中西財務副大臣が出席された。会合には21エコノミーの他、IMF、世界銀行、ADB等の国際機関やABAC等の組織も招かれた。会合は議長国マレーシアのザフルル・アジズ財務大臣の挨拶から始まり、財務大臣プロセスに関連する取組のアップデートやAPEC地域の経済状況の分析等について報告があり、プレナリーセッションへと進行した。(1) 【プレナリーセッション】新型コロナウイルス感染拡大への対応当プレナリーセッションにおいては、それぞれのエコノミーにおける新型コロナウイルスの経済への影響や新型コロナウイルス対策に関する率直な意見交換が行われた。いずれのエコノミーも新型コロナウイルスにより経済が一時的に深刻な落ち込みを見せており、直接給付(所得補償)、課税控除の拡大、債務返済猶予や借り換え支援等、前例のない規模で影響軽減策や景気刺激策を実施していることがエコノミー間で共有された。中西副大臣は、・新型コロナウイルスの影響を踏まえ、政府は雇用の安定、事業の継続、生活の下支えのため、GDPの約40%にあたる約2.2兆ドル(約234兆円)の大規模な対策を講じたこと・足元では、感染拡大防止との適切なバランスを取りながら、経済活動を再開していること、また、政策対応の効果もあり、日本経済は持ち直しの動きが見第27回APEC財務大臣会合について国際局調査課長 陣田 直也/調査課課長補佐 山本 雄也※はG20メンバー国(参考)その他のG20メンバー国はドイツ、フランス、英国、イタリア、インド、アルゼンチン、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合APECミャンマーラオスカンボジアASEAN事務局ブルネイマレーシアシンガポールベトナムインドネシア※フィリピンタイ日本※韓国※ 中国※米国※ カナダ※ロシア※ メキシコ※チリ ペルー豪州※ 香港 台湾ニュージーランドパプアニューギニアASEAN+3ASEAN ファイナンス 2020 Nov.15SPOT

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