ファイナンス 2020年11月号 No.660
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第53回ADB年次総会に併せて、アジアにおける地域金融協力関連の会議として、第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議、第23回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議がビデオ形式で開催された。今年は、新型コロナウイルス感染症により地域経済が大きな影響を受ける中、各国の対応が議論されるとともに、域内で金融協力を進める重要性が改めて共有された。以下、本稿では、これらの会議における議論の概要を紹介したい。1第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議9月18日(金)に韓国の議長の下、第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、日本からは麻生副総理兼財務大臣の代理として岡村財務官、黒田日本銀行総裁が出席した。地域・各国の経済・金融情勢及びASEAN+3における地域金融協力について意見交換を行った。2第23回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議9月18日(金)に日本とベトナムの共同議長の下、第23回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、本会合)が開催された。日本からは、麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。本会合では、(1)世界・域内経済の見通し及び新型コロナウイルスのパンデミックがもたらすリスクや課題への政策対応についての意見交換、(2)地域金融協力の強化について議論したが、以下、その概要を紹介する。(1) 世界・域内経済の見通し、及び新型コロナウイルスがもたらすリスクや課題への政策対応AMRO、ADB、IMFから世界・地域経済の情勢等について説明があった後、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな打撃を受けた域内の経済情勢について大臣・総裁間で意見交換を行い、各当局が感染拡大の影響を緩和するため迅速に対処し、様々な政策対応を行ったことで、徐々に経済活動の制限を解除することを可能にしたことが確認された。また、本年の経済成長は急激な落込みが見込まれるが、今後回復すると期待していること、今後も下方リスクの兆しを注視し続ける必要があること、また、域内経済の持続的な回復を支えるため、すべての利用可能な政策手段を引き続き用いて対応していくことを確認した。(2)地域金融協力について1.チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、ASEAN+3では、急激な資本流出による危機が生じた国を支援し、危機の連鎖と拡大を防ぐ枠組みとして、2000年に二国間通貨スワップ取極めから構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が立ち上げられた。その後、2010年には、これらの通貨スワップ発動の際の当局間の意志決定の手続きを共通化し、支援の迅速化・円滑化を図るため、CMIのマルチ化契約(CMIM)が締結され、その後も随時、機能強化が図られてきた。マルチ化から10年という節目の年に行われた本会合では、(1)IMFデリンク割合(IMFプログラムなしでも発動できる割合)の30%から40%への引き上げに最終合意するとともに、(2)CMIMの円滑な実アジアにおける 地域金融協力の促進 (ASEAN+3、日中韓)国際局地域協力課長 森 和也/地域協力調整室長 村口 和人/企画係長 澤田 駿12 ファイナンス 2020 Nov.SPOT

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