ファイナンス 2020年11月号 No.660
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たって中南米出身者が務めてきたが、クラベルカロネ氏は初の米国出身の総裁として、10月1日に就任した。なお、IDBの第61回年次総会は、当初、本年3月にコロンビア・バランキージャで開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により2021年3月17~21日に延期されている。開催地は変更なく、コロンビア・バランキージャでの開催が予定されている。4アジア開発銀行(ADB)年次総会アジア開発銀行(ADB)の第53回年次総会については、当初、本年5月に韓国・インチョンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期され、9月17・18日にバーチャル形式で開催された*1。本年1月に浅川雅嗣総裁が就任して以来、初めて開催された年次総会となった。年次総会開催期間中には、様々なセミナー・イベントが開催され、日本・ADB・WHO共催の財務・保健大臣合同シンポジウムや、ADB主催の税に関するセミナーにおいて、麻生副総理兼財務大臣がオープニングスピーチを行った。また、「Developing Asia Beyond the Pandemic」というテーマで開催されたADB総務セミナーには、ADBの日本国総務代理である黒田日銀総裁がスピーカーとして参加した。年次総会の開催に先立って、アジア開発基金(ADF)の最終増資会合が開催された。ADFは、島嶼国など脆弱な国々を支援する財源となる基金であり、4年に1度増資が行われている。今回の増資会合において各国が拠出額をプレッジし、増資が成功裡に妥結したことは、今回の年次総会における大きな成果の一つである。ADF増資においては、日本が重視する質の高いインフラ投資や保健などが引き続き重要政策と位置付けられている。日本国総務演説においては、引き続きADFの最大のドナー国として、ドナー貢献の35%、約1,076億円を拠出する意図を表明するとともに、日本の開発プライオリティである保健・質の高いインフラ投資・債務持続可能性・国内資金動員について、ADBによる取組みの継続・強化への期待を表明した。次回の年次総会は、2021年5月2~5日にジョージア・トビリシでの開催が予定されている。*1) このほか、財務諸表と純利益の配分の採択のため、5月に小規模総会をバーチャルで開催している。5欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会・総裁選欧州復興開発銀行(EBRD)の第29回年次総会は、当初、本年5月に英国・ロンドンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期され、10月5~8日にバーチャル形式で開催された。任期満了に伴い、7月2日に退任したスマ・チャクラバルティ前総裁の後任を選出する選挙が10月8日にバーチャル形式で実施された。最終的な立候補者は、フランスのオディール・ルノーバッソ経済・財務省国庫総局長と、ポーランドのタデウシュ・コシチンスキー財務大臣の2名であった。当初は、イタリアのピエール・カルロ・パドアン元財務大臣も立候補していたが、投票日までに立候補を取り下げた。投票の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、ルノーバッソ候補が当選した。日本からは、中西財務副大臣が臨時総務代理としてルノーバッソ候補を支持する投票を行った。また、今回の年次総会では、EBRDの次期中期戦略(2021~2025年)の採択も行われた。日本国総務演説においては、次期中期戦略の採択を支持した上で、所得水準が高く移行が進んだ国(ATCs:Advanced Transition Countries)の卒業に関して、コロナ危機後の国別戦略において段階的な卒業に向けた道筋を確保すべきと述べるとともに、EBRDの支援対象国のサブサハラへの拡大の必要性については、EBRDの付加価値が認められる分野や他の国際機関等との関係などについて更なる議論が必要であることを表明した。次回の年次総会は、2021年5月19~20日にアルメニア・エレバンでの開催が予定されている。6終わりに次回以降の年次総会や総裁選の形式がどうなるか現時点では確たる見通しは示せないが、今回の一連の会議は、主催者・参加者双方にとって前例にないバーチャル形式の会議を成功させた経験として有意義なものとなったと考えている。文中、意見にわたる部分は、筆者の個人的見解である。 ファイナンス 2020 Nov.11地域開発金融機関(RDBs)の年次総会等についてSPOT

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