ファイナンス 2020年11月号 No.660
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1概要国際開発金融機関(MDBs)のうち、特定の地域における開発を支援する地域開発金融機関(RDBs)であるアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)については、例年、春ごろに各機関の年次総会を開催している。本年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、春に予定されていた年次総会が延期されることとなった。延期後も引き続き対面での会議開催が難しい状況であることから、年次総会が来年まで延期されたIDBを除く3機関について、8月から10月の間に、史上初めてバーチャル形式で年次総会が開催されることとなった。また、IDB・AfDB・EBRDの3機関については、総裁選も実施された(IDBは総裁選のみを実施、AfDB・EBRDは年次総会の開催に併せて総裁選を実施)。以下、開催順に沿って、4機関の年次総会・総裁選の概要を紹介したい。2アフリカ開発銀行(AfDB)年次総会・総裁選アフリカ開発銀行(AfDB)第55回年次総会・アフリカ開発基金(AfDF)第46回年次総会は、当初、本年5月にAfDB本部が所在するコートジボワール・アビジャンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期された結果、8月26・27日の日程でバーチャル形式で開催されることとなった。年次総会の最大のトピックは、8月27日に実施された総裁選であった。総裁選の立候補者は、2期目を目指す現職のアキンウミ・アデシナ総裁のみであり、バーチャル形式で行われた総裁選の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、アデシナ総裁が再選された。日本からは、遠山財務副大臣(当時)が臨時総務代理としてアデシナ総裁の再選を支持する投票を行った。なお、アデシナ総裁に対しては、不適切な行為があったとして本年1月に内部告発が行われたが、理事会の下に設置された倫理委員会や外部の独立パネルでの検討を経て、不適切な行為の証拠は見つけられないとの結論が出されていた。内部告発を処理するプロセスにおいて明らかになったAfDBのガバナンス面での課題に対応するため、今回の年次総会において、ガバナンス改革を検討する委員会を総務会の下に創設することが決定された。日本からは、麻生副総理兼財務大臣が日本国総務演説を行った。総務演説では、アデシナ総裁の1期目の実績を踏まえ、総裁選における再選支持を表明するとともに、2期目における、質の高いインフラ投資の促進、債務管理能力や債務の透明性の強化、ガバナンス強化、日本との協力の継続・強化への期待を表明した。次回の年次総会は、2021年5月24~28日にガーナ・アクラでの開催が予定されている。3米州開発銀行(IDB)総裁選米州開発銀行(IDB)については、3期、15年間総裁を務めたルイス・アルベルト・モレノ総裁の任期が本年9月末までであったことから、9月12日にバーチャル形式で総裁選が実施された。総裁選に先立ち、中南米の一部の国が、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下では十分な議論を行えないため総裁選を延期すべきとの主張を行っていたが、最終的には総裁選は予定通りの日程で実施された。立候補者は、米国のマウリシオ・クラベルカロネ国家安全保障会議(NSC)西半球担当補佐官補のみであった。日本は、総裁選に先立ちプレスリリースを発出し、クラベルカロネ氏への支持と予定通りの総裁選の実施への支持を表明した。投票の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、クラベルカロネ氏が当選した。IDB総裁は過去4代にわ地域開発金融機関(RDBs)の年次総会等について国際局開発機関課課長補佐 乾 慶一郎10 ファイナンス 2020 Nov.SPOT

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