ファイナンス 2020年11月号 No.660
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今回の補正予算に計上された特別定額給付金や持続化給付金などは、一般会計予算から支出され、新規国債によって賄われる。また、企業の資金繰り対策のために日本政策金融公庫等へ貸付けられる財政投融資の追加原資は財投債によって賄われる。そのため、補正予算後の2つの国債の発行額は当初発行額と比較し、新規国債は57.6兆円増、財投債は42.2兆円増で合計約100兆円増となり、過去最大の増加となった(図表7)。こうした国債の消化方式は3つに分かれる。「市中発行分」は、市場参加者向けに発行される金額で、通常の入札による市中発行額(カレンダーベース市中発行額)が大部分を占める。「個人向け販売分」は、個人を対象として発行される個人向け国債の発行額。「日銀乗換」は、日銀が保有する国債のうち償還が到来する国債の一部について、現金の償還ではなく、借換債を引き受ける金額だ。このうち、通常の入札による市中発行額は83.5兆円増加することになったが、市場参加者によって、国債に対するニーズは異なるため、様々なニーズを確認しながら発行計画を策定することが重要になる。たとえば、生命保険会社は、2025年の国際資本基準(ICS:経済価値ベースのソルベンシー規制)導入を控える中、資産と負債のデュレーション・ギャップを埋める観点から、20年以上の超長期債を好む傾向がある。一方で銀行などの預金取扱金融機関は、マイナス利回りの中、国債の保有残高を減らしてきたが、足下では日銀の新型コロナ対応オペ等の利用の際に必要となる担保としてのニーズ等が増加している。こうした市場ニーズを把握した上で国債発行計画を策定しなければ、需給バランスが崩れて金利上昇を招き、発行コストが増加して結果的には国民負担の増加につながってしまう。そこで、国債管理政策の目標として、「国債の確実かつ円滑な発行及び中長期的な調達コストの抑制」を掲げており、国債企画課、国債業務課では、国債市場特別参加者会合、国債投資家懇談会や市場参加者への日々のヒアリング等を通じて、市場のニーズを把握している。図表7国債発行額の推移財投債借換債復興債年金特例国債新規国債(特例国債・建設国債)5.312.334.042.847.540.938.534.938.033.634.436.632.658.290.22.6 2.6 11.32.30.11.30.80.10.80.90.90.90.49.042.4109.0111.0110.2119.4114.2109.5106.4103.3104.2108.0108.0108.013.114.210.714.013.419.612.010.612.512.021.454.25.721.321.376.4176.2177.5164.3172.0163.9167.9152.0148.3154.2153.5188.6253.3050100150200250602324252627282930222(兆円)(年度)昭和50平成10令和元(当初)(1次補正後)(2次補正後)8 ファイナンス 2020 Nov.

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