ファイナンス 2020年10月号 No.659
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山形市ため、顔が凍らないようにゴーグルとフェイスマスクを装着し、自分自身が樹氷にならないよう注意が必要だ。そのため、ロープウェイから降りた後は、スキー場の樹氷原コースを大急ぎで滑り下りるケースがほとんどである。最近は、この樹氷を見るために海外からの観光客も多い。ロープウェイの乗客は、スキーヤーやスノーボーダーよりも、むしろカメラを持った観光客が多いのが現状である。ロープウェイを降りた観光客は、樹氷原を眺めるのが目的だが、蔵王の吹雪、その寒さを体験することもまた楽しんでいるように見える。また、スキー場内には蔵王の森に囲まれた「蔵王温泉大露天風呂」がある。冬季は閉鎖されているが、それ以外のシーズンは、春夏は緑、秋は紅葉を楽しめる、開放感満載の大露天風呂である。硫黄泉・乳白色の蔵王温泉大露天風呂2.宝ほうじゅさん珠山立りっしゃくじ石寺(山寺)宝珠山立石寺は、860年、天台宗の高僧慈じ覚かく大師円えんにん仁(794-864)が、清和天皇の勅許を得て、山形市山寺地区の山の中に創建した寺である。国指定重要文化財である根本中堂には、比叡山延暦寺から分火された「不ふめつ滅の法ほうとう灯」が、千年以上絶えることなく今も燃え続けている。ちなみに、この「灯」は、織田信長の焼き討ちで延暦寺を再建した際、立石寺から逆に延暦寺に分火した「灯」とされている。立石寺を創建した慈覚大師や第二世安あんねん然大師によってこの地に伝えられたとされているのが「紅花」である。江戸時代初期には、全国生産の50~60%を占め、山形は紅花の日本一の産地となった。比叡山と縁故の深い「近江商人」などの商人による交易(最上川舟運)により、上方では織物の染料や化粧用の紅に使用され高級品として扱われ、紅花の価格は「米の百倍、金の十倍」と言われていた。なお、紅花は、山形県の県の花にも指定されており、この紅花の栽培、交易が山寺と歴史的な関わりが深いことから、「山寺が支えた紅花文化」として、平成30年度、文化庁から「日本遺産」に認定された。また、1689年、前述した俳人・松尾芭蕉がこの寺を訪れた際、「閑しずかさや 岩にしみ入る 蝉の声」と詠んだことでも知られる東北を代表する寺である。アクセスは山形駅から車で約30分程度。山寺全域には、大小30ほどの御堂や塔が建てられており、幻想的、清閑な空間は、映画「3月のライオン」のロケ地にも選ばれた。山門から奥之院まで、1015段の石段を上りながら、参道の木々、岩、石碑、切り立った崖を眺めつつ、山寺の一番高い位置にある「五大堂」の舞台からの眺めは絶景である。(往復所要時間1時間半)山寺最古の建物・納経堂(左)と開山堂(右)5山形の酒と花笠締め酒処山形では、「地元県産酒(日本酒やワイン)で乾杯しよう!」と言う県条例が制定されている。また、ご存知の方も多いと思うが、2016年には、国税庁より清酒の地理的表示GI(Geographical Indication)「山形」の指定を受けた。日本酒の産地として、県全体が指定されるのは全国でも初めてのことであり、県内52の酒蔵が「山形の酒」の美味さに磨きをかけている。一部の愛飲家の間では、「山形の酒は二日酔いしない」というまことしやかな説もある程、地元の酒に対する愛着度が強い。最近は、中々宴会が出来ない状況下にあるが、この場では、山形特有の宴会の締め方を紹介したい。72 ファイナンス 2020 Oct.連載各地の話題

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