ファイナンス 2020年10月号 No.659
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山形市入った「鳥とり中ちゅうか華」と呼ばれるメニューが人気を博している。[総務省統計局統計データ:外食(中華そば)一世帯当たり年間支出額(2017年~2019年平均)1位:山形市15,687円 2位:新潟市11,592円 3位:宇都宮市11,330円 全国平均:6,581円]山形・夏の主役:冷やしラーメン3芋煮の聖地・馬まみが見ヶ崎さき川「芋煮会」この言葉は、山形県民にとっては季語であり、「春の花見」「秋の芋煮」と言われる程である。秋が訪れると、近くの河原に里芋や肉などの食材を持ち寄り、河原の石を並べ、鍋を置き、仲間内で楽しむ年中行事であるとともに秋の風物詩でもある。しかしながら、私が山形から上京した三十数年前、全国から集まった同期に芋煮会の話をするも、誰一人として知っている人がおらず、それどころか「それってバーベキューじゃねえの。河原で芋なんか煮て食ってんのは、山形だけだ!」と言われ、正に東京の洗礼、カルチャーショックを受けた苦い思い出がある。「花見」と「芋煮」は全国各地で開催される輝かしい「日本の文化」と思っていたが、その概念が見事に吹き飛ばされた。(その後、調べてみると芋煮会は、お隣、宮城県や福島県でも開催されており、東北地方では、メジャーな行事であることが判明している。)気を取り直して芋煮の話を続けるが、山形県における芋煮会の起源は、江戸時代まで遡る。最上川を利用した舟しゅううん運が栄え、酒田港を経由し日本各地と交易をしており、その際、川の発着場で、積み荷の荷待ちをしていた船頭さん達が、地元の人から里芋などをもらい、河原でそれらを煮て食していた会合が芋煮会の起源とされている。それ以降、脈々とその芋煮会(当時の呼称は不明)は、山形県内に伝え広まり、山形の秋には欠かせない年中行事となっている。なお、最上川は、山形県南部吾妻山系に端を発し、米沢、山形、新庄の各盆地を経由し、庄内平野の酒田市で日本海に流れ着く。山形県1県のみを見事に縦断して流れる山形県民の母なる川である。全長229km。日本三大急流の一つであり、やはり江戸時代に松尾芭蕉が「五さみだれ月雨を集めて早し最上川」と詠んだことや、舟下りが楽しめる観光地としても有名である。話を芋煮会に戻すが、毎年開催される「日本一の芋煮会フェスティバル」には、県内外から多くの芋煮ファンが、山形市内の聖地・馬まみが見ヶ崎さき川の河川敷に集結する。昨年の第31回大会では、直径6.5㍍の日本一の大鍋「3代目鍋太郎」で、3万5千食の芋煮が作られ、来場した観客を魅了した。ちなみに使用された食材の量は、里芋4トン、牛肉1.4トン、こんにゃく5500枚、ねぎ5000本、醤油820㍑、日本酒90升、砂糖200㎏、水7トンであり、新品のショベルカーが調理器具として使われた。さらに、その重機の可動部分には、潤滑油代わりにバターやマーガリンが使用されるなど、食の安全性・衛生面への配慮もなされているものである。この芋煮会だが、山形県内では、各地でその味付けが異なっている。山形市などの村山地方が、牛肉を使った醤油味ベース、米沢市など置賜地方は、牛肉、醤油味ベースは同じだが、大根やしめじも入れられる。また、酒田市、鶴岡市などの庄内地方は、豚肉を使った味噌味ベース、新庄市などの最上地方は、豚肉に醤油味ベースである。「どっちの芋煮が美味い」「こっちが美味い」などと各地域の芋煮を比べながら食べるのも楽しい。ちなみに芋煮会の締めは、残った芋煮にカレールーとうどんを入れたカレーうどんを食べるのが定番となっている。また、芋煮シーズンになると、山形のスーパーでは、鍋、薪、そして食材がセットになった芋煮会セットなるものが店頭に並ぶ。最近は見かけなくなったが、以前は河原近くのコンビニで、薪が販売されていた。70 ファイナンス 2020 Oct.連載各地の話題

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