ファイナンス 2020年10月号 No.659
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5.おわりに本稿では、日本国債に係る金利リスクについてデュレーションやDV01という観点で説明してきました。本稿で強調したとおり、国債の主な投資家である金融機関はリスク管理を行う必要があります。したがって、政府は安定的な国債消化のため、金融機関がどの*21) タックマン(2012)では年2回の利払いで定式化しているため、厳密な説明を知りたい方は同書を参照してください。また、ここではわかりやすさを重視するため10年債の事例を取り上げていますが、タックマン(2012)ではT年債という一般的な形でデュレーションを定義しています。ようにリスク管理を行っているかや、現在金融機関がどの程度リスク・テイクを行っているか等を把握する必要があります。もっとも、金利リスク量を把握するうえでは他にも重要な概念が存在します。特に、コンベクシティやグリッド・ポイント・センシティビティという概念は重要性が高いため、次回はこれらの概念を解説することを予定しています。1.数式を用いたデュレーションの定義ここではマッコーレー・デュレーションと修正デュレーションの関係を考えます。まず毎年cというクーポンが得られる10年国債を考えます。この場合、1年目はc円、2年目はc円と続き、最後にクーポンのc円と元本の100円が得られます(実際のクーポンは年2回支払いですが簡略化しています*21)。一般的に資産価格は将来のキャッシュ・フローを割り引くことでプライシングがなされると想定しますが、ここでも、国債のキャッシュ・フローを金利rで割り引くことで、下記のように10年国債の価格が定まっているとします。P=c(1+r)+c(1+r)2+…+c+100(1+r)10…(1)デュレーションの定義は-1P∆P∆rでしたが、極限を取り、上記の式をrで微分して-Pで割ると、下記の関係式が導出できます。D=-1P∂P∂r=1P[1×c(1+r)2+2×c(1+r)3+…+10×c+100(1+r)11]=1(1+r)1P[1×c(1+r)+2×c(1+r)2+…+10×c+100(1+r)10]…(2)この式の(※)の部分をみると、例えば、1×c(1+r)Pは1年にc(1+r)P(すなわち、クーポンcの現在価値をPで割った値)というウェイトがかけられており、2×c(1+r)2Pは2年にc(1+r)2Pというウェイトがかけられていると解釈できます。そのため、(※)を年限について各キャッシュ・フローの現在価値で加重平均を取るような調整をしているとみれば、この部分は「平均回収期間」と解釈することができます。この(※)の部分をマッコーレー・デュレーションDMacと定義すれば、デュレーションとマッコーレー・デュレーションは下記のような関係で表現することができます。D=DMac1+r(※)BOX 2 マッコーレー・デュレーションと修正デュレーション ファイナンス 2020 Oct.63シリーズ 日本経済を考える 105連載日本経済を 考える

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