ファイナンス 2020年10月号 No.659
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3 デュレーションのフォーマルな定義3.1  金利が変化した時の価格変化「率」 (金利感応度)ここでフォーマルにデュレーションを定義しておきます。デュレーションとは金利が変化した時の価格変化「率」(金利感応度)を指します。金利変化を∆r、国債価格の変化を∆Pとすると、デュレーション(D)は下記のように定義できます。D=-1P∆P∆rここでマイナスがついている理由は、金利が上昇すると価格は下がるため、1P∆P∆rはマイナスの値になることから、マイナスをつけてデュレーションがプラスの値になるように調整しているためです。上記の式を書き換えると、下記の関係を導出できます。∆PP=-D∆rこの関係式は金利の変化に対して国債の価格がどれくらい動くかを把握する式として実務的には非常に頻繁に用いられます*9。例えば、10年国債の利回りが1bps(0.01%)動いた場合、価格はそのデュレーションに比例して動きますから、デュレーションを10とすると、上記の式から-D∆r=-10×1bps=(100円当たり)△10銭と価格変化が計算できます。20年債の利回りが3bps動いた場合は、デュレーションを20とすると、-D∆r=-20×3bps=(100円当たり)△60銭という形で計算できます。価格の変化を利回りの変化に直したいときもありますが、上の関係式より∆r=1D∆PPとなるため、価格変化率をデュレーションで割ることで利回りの変化に変換することができます。気を付けるべき点はデュレーションの概念は微小の変化で定義されている点です。そのため、大きく金利*9) ハル(2008)は「この式の便利さが1938年にMacaulayが初めて使ったデュレーションがよく使われる尺度になった理由である」(p.93)と言及しています。筆者のこれまでの論文でも、例えば、服部(2020b)ではイールド・ボラティリティをプライス・ボラティリティに修正するのにデュレーションを掛け合わせることで調整しましたが、これもこの式に基づいて算出しています。が動いた場合には価格変化はデュレーションから算出される値からずれる可能性があります。例えば、10年国債を保有しており、デュレーションを用いて金利の変化に伴う価格への影響を考えたい場合、1bpsの金利変化であれば正確に計算できる一方で、1%(100bps)という100倍の金利変化のリスク量を計算する際、1bpsのリスク量の100倍と試算することは少し粗い計算であるということです。実はデュレーションの大きさは金利の水準に依存し、これを捉えるものとしてコンベクシティという概念があります。この概念はBOX 2で若干ふれていますが、コンベクシティについては次回のレポートで取り上げることを予定しています。3.2 デュレーションと平均回収期間図5は2年から40年国債の実際のデュレーションを示していますが、年限とほぼ同じであるものの、若干ずれていることが分かります。例えば10年国債のデュレーションを計算すると、直近の10年債の修正デュレーションは9.79であり、10よりわずかに小さくなります。この理由として、国債のような固定利付債に関しては金利感応度が「債券の平均回収期間」と密接な関係にあることが挙げられます。債券の平均回収期間とは、最初投資した100円が平均してどのくらいの期間で回収できるかを指しています。先ほどの例のようにクーポン1%の10年国債に100円投資した際、毎年1円を回収して、10年目には金利と元本の合計101円を回収することになります。たしかに、大部分の回収は満期である10年目ですが、途中も1円ずつ回収しているため、その平均的な回収期間は10に近いものの、10年より若干短くなります。詳細はBOX 2で数式を使って説明しますが、固定利付債の金利感応度は債券の平均回収期間にほぼ一致することを示せます。図5 各年限の国債のデュレーション2年5年10年20年30年40年1.954.839.7919.0427.2535.67注:上記は2020年8月時点での直近発行銘柄(カレント銘柄)についてBloombergの値を用いています。 ファイナンス 2020 Oct.59シリーズ 日本経済を考える 105連載日本経済を 考える

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