資金調達の現状と長期的な推移・企業の貸借対照表をみると、短期借入金や社債等の有利子負債を大幅に増加させ、必要な資金を確保した上で、将来の不確実性に備えて現預金の保有を増加させている(図表7)。・リーマンショック時と比較すると、今回のコロナ禍の下では、政府や日本銀行、金融機関による積極的な支援もあって、借入金が速やかに増加するなど、資金が円滑に確保されている(図表8、9)。図表7 貸借対照表(2020年6月末)その他の資産194(+7.9%)固定資産960(+0.7%)棚卸資産117(▲1.8%)受取手形・売掛金182(▲15%)有価証券15(▲22%)現金・預金224(+11%)その他の純資産279(▲0.6%)内部留保(=利益剰余金)459(▲1.8%)その他の負債277(▲2.4%)長期借入金274(+3.6%)社債89(+13%)短期借入金182(+21%)支払手形・買掛金133(▲18%)(兆円、( )は前年比)資産負債・純資産【資産合計1692兆円(前年比+0.3%)】図表8 資金調達(フロー)2005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020051015▲10▲520(兆円)3025内部調達等社債短期借入金長期借入金資金調達計(=資金運用状況計)図表9 資金運用状況(フロー)2005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020051015▲10▲520(兆円)3025設備投資運転資金現金・預金投資有価証券等資金運用状況計(=資金調達計)(注)図表7,8,9:金融業、保険業を除く。 図表8,9:内部調達等=資本金+自己株式+新株予約権+その他純資産+減価償却+引当金+その他負債、運転資金=在庫投資+企業間信用差額+その他の流動資産+繰延資産、投資有価証券等=投資有価証券+その他投資資産+一時保有有価証券、各項目は後方4四半期平均。(出典)財務省「法人企業統計調査季報」産業構造の変化とデジタル化への対応・ポストコロナを含む今後の中長期的な動向を考えると、今回の感染症拡大が経済社会のデジタル化を加速させ、産業構造の変化をもたらす可能性がある(図表10)。・こうした「新たな日常」構築の原動力となるデジタル化に対応するため、企業においても、足もとでソフトウェアや情報機器といった情報化投資の重要性への認識が高まっている(図表11)。・しかしながら、現状では、IoTやAIといった最先端のデジタル技術の活用に当たって、新事業への進出や新製品・サービスの開発を目的としたものは少ない。今後はこうした目的での更なる取組が必要とされるだろう(図表12)。図表10 中長期的な需要の動向・デジタル化による関連製品の需要増加(生産用機械、情報通信機械)・ECの普及による実店舗での売上減少(小売業)・WEB会議の普及によるビジネス需要の減少(旅客業、宿泊業)拡大15.3%同水準に戻る45.1%縮小39.6%※回答企業数:803社“感染症拡大前”と比較した“感染症収束後”の中長期的な業界全体の需要動向の見通し企業の声拡大縮小図表11 設備投資の対象010203040(%)60502019年度調査2020年度調査建物(内部管理用)建物(生産・販売等用)建物以外の構造物等機械及び装置情報機器車両、船舶等工具、器具及び備品ソフトウェア土地その他▲0.9▲2.9▲2.6+0.4+3.2▲0.4+0.1+0.7▲1.9+0.5調査年度における設備投資について、10項目から重要度の高い3項目として回答のあった社数の割合図表12 先端技術の活用目的(%)604020070503010その他人手不足の解消コストの削減(人件費、保守費用等)業務効率の向上(従業員の負担軽減)既存製(商)品・サービスへの付加価値の付与(品質・ブランドの向上)新製(商)品・サービスの開発新事業への進出(多角化)既存事業の規模拡大(競争力強化)・回答企業数:821社(最大2項目回答)・「先端技術」とは、IoT、AI、ロボット、クラウド、ビッグデータを対象としている(出典)財務省「新型コロナウイルス感染症による企業活動への影響とその対応(財務局調査)」(2020年8月4日)、内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」、財務省「財務局調査による「先端技術(IoT、AI等)の活用状況」について」(2018年11月1日) (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2020 Oct.49コラム 経済トレンド 76連載経済 トレンド
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