ファイナンス 2020年10月号 No.659
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(2)ヴェネチア国際映画祭(水の都、ヴェネチア)イタリア北東部の都ヴェネト州の州都、イタリアを代表する観光地、ヴェネチアで開催される世界最古の国際映画祭。国際美術展覧会ヴェネツィア・ビエンナーレの一部として、毎年8月から9月にかけて市内のリド島で開催。「配信者の作品にもいち早く門戸を開くなど、固定観念に縛られず魅力ある作品を柔軟に評価している姿勢がここ数年目立つ」と言われる。上映プログラムは、ヴェネチア部門(コンペティション)、非コンペティション部門、オリゾンティ部門、クラシック部門、SCONFINI部門、2019年に新設されたVR部門の主要6部門で構成され、各部門の最優秀作品には賞と賞金が贈られる。多くの国際映画祭が中止や延期、オンラインでの開催を余儀なくされる中、今年も感染防止策をとった上で、予定通り9月2~12日に開催され、黒沢清監督の「スパイの妻」(時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性を描くラブ・サスペンス)が、日本映画では、2003年に「座頭市」で参加した北野武監督以来17年ぶりに監督賞(銀獅子賞)を受賞。現下の状況で渡航を断念した黒沢監督は、授賞式にビデオメッセージを寄せ、「長い間、監督に携わってきましたが、この年齢で喜ばしいプレゼントになりました」と喜びを語ったという。最高賞は、金獅子賞で、これまでに日本からは1951年に黒澤明監督の「羅生門」(芥川龍之介の原作「藪の中」を黒澤明監督が映画化。ある侍の死に立ち会った男女4人それぞれの視点から見た事件の内幕。この作品で三船敏郎は「世界のミフネ」に。)、1958年に稲垣浩監督の「無法松の一生」(三船敏郎、高峰秀子出演、無骨な人力車夫の生涯を描いた、1943年の稲垣監督自身の映画を自らリメーク。)、1998年に北野武監督の「HANA-BI」(不治の病の妻や同僚の死を目の当たりにした刑事の生き様を描いたドラマ。)が受賞。このほか、2005年に宮崎駿監督が栄誉金獅子賞を受賞しているなど、ここでも日本関係の受賞は多い。(3)ベルリン国際映画祭(ベルリンのブランデンブルク門)ヨーロッパ最大の映画産業都市ベルリンで開催される国際映画祭。ベルリン国際映画祭の歴史は1951年に始まり、三大映画祭の中で唯一首都で開催されることから、来場者数は50万人、上映本数は400本にも上る。華やかさではカンヌやベネチアよりやや劣るが,回顧特集などの企画上映は充実しているという。映画祭と並行して業界関係者向けの映画マーケットが開催されており、配給権の売買や共同製作などの商談が行われる。これまでに、1963年の今井正監督の「武士道残酷物語」(主君の犠牲となってきた哀れな家系の物語。萬屋錦之介、東野英治郎出演)と2002年の宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が長編部門の最高賞、金熊賞(ベルリンの紋章は熊)を受賞。(4)アカデミー賞いずれも欧州の3大映画祭に対して、いかにもアメリカ的なのがオスカーのアカデミー賞。3大国際映画祭よりも古く、今年92回目を迎えた。日本関係の受賞も多く、黒澤明監督は、1952年『羅生門』で、1976年にソ連との合作映画「デルス・ウザーラ」で外国語映画賞を受賞している他、1990年には名誉賞受賞。1953年にはカンヌ国際映画祭で42 ファイナンス 2020 Oct.SPOT

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