ファイナンス 2020年10月号 No.659
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オジブリ作品を巡っては、AT&T傘下のワーナーメディアが北米での配信を決める一方、ネットフリックスが日本と北米を除く世界での配信権を獲得したという。「デジタルコンテンツ白書2019」によると、2018年のネットワーク配信が2,194億円となり、ついに映画興行収入2,225億円に迫る規模となったという。4国内での映画ランキング一般社団法人日本映画製作者連盟の日本の2019年の興行収入ランキングを見ると、トップ10の全て或いは殆どをアメリカ映画が占めている欧州や香港と違い、1位はアニメの「天気の子」で2位と3位はディズニーだが、4本は邦画。以下、過去40年の興行収入(1999年までは配給収入)ランキングを見ていく。30年前、1989年のランキングは、1、2位は洋画(「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」(ハリソン・フォード主演の人気シリーズ第3作)が44億円、「レインマン」(ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ主演、アカデミー賞主要4部門受賞)33億円)で、3位に邦画、「魔女の宅急便」(宮崎駿監督、魔法使いの少女の成長を描くアニメ)が21.5億円と続く。1980年代の10年は、1986年「子猫物語」(ムツゴロウ、畑正憲監督。一匹の子猫が主人公の動物ファミリー映画。)、1988年「敦煌」(井上靖原作の歴史大作)で、邦画が2回、全体の1位。同じ時期の邦画1位は1980年の「影武者」(黒澤明監督の武田信玄の影武者を描いた戦国スペクタクル巨編。)を始め実写映画が多く、アニメは1989年のスタジオジブリの「魔女の宅急便」だけ。邦画のトップ3で見ても、アニメのランキング入りは30映画中5本で、うち4本はドラえもんで、ジブリ作品が1本。宮崎駿原作・脚本・監督の「風の谷のナウシカ」は1984年、「となりのトトロ」は1988年に公開。まだ配給収入10億円以上のリストには載ってこないが、「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」を見た黒澤明監督は、「映画に来たら嬉しいって才能がアニメに皆行っちゃうから、映画界も頑張らないとね。」と語ったという。「風の谷のナウシカ」の映画化について、当時、徳間書房にいたスタジオジブリの鈴木代表取締役プロデューサーは、「八十年代に入って、社長の徳間康快が活字と映像のメディアミックスと言い出して、「何でもいいから企画出せ」と。で、原作がないのはダメだという人がいて、宮さんが「なら原作つくちゃお」とやったのが「ナウシカ」の連載。それでもなかなか映画化に持ち込めなくて、思いついたのが宣伝部長を仲間に引き入れること。もう一人の同僚と、彼は博打好きだから五万円ずつ負けよう、そしたら負い目に感じて働いてくれるはずだとたくらんだ。それで、夜の一〇時から朝の六時まで、5万ずつ見事に負けたら、宣伝部長はその足で博報堂に行って映画化を決めてきました。芸は身を助ける。ですよ。」と語る。20年前、1999年は興行収入上位3位はいずれも洋画(「アルマゲドン」(ブルース・ウィルス主演。小惑星の接近で滅亡の危機に瀕した地球を救うため宇宙に旅立つ男たちを描いたアドベンチャー)83.5億円、「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」(ジョージ・ルーカス監督、前3部作から約30年前、ダース・ベイダーの少年時代を描く。)78億円、「マトリックス」(キアヌ・リーブス主演、仮想現実空間での人類とコンピュータの戦いを描いたSFアクション。革新的なアクションシーンで、世界的大ヒット)50億円)で、邦画はアニメの「劇場版 ポケットモンスター 幻のポケモン・ルギア爆誕 ピカチュウたんけんたい」(劇場版ポケモンの第二弾)の35億円の5位が最高。1990年代の10年は、1992年「紅の豚」(宮崎駿の短編漫画を映画化。1920年代のイタリアで、呪いで“豚”となった中年パイロットの活躍を描く。)、1997年「もののけ姫」(室町時代の日本での神と人間の戦いを描く、当時の日本の興行記録を塗り替えた作品)の邦画(いずれもジブリのアニメ)が2回、全体の1位。同じ時期の10年間の邦画の1位をみると、アニメが増えて、1991年の「おもいでぽろぽろ」(ジブリの高畑勲監督が、同名コミックを映画化した長編アニメ。)、1992年の「紅の豚」、1994年の「平成狸合戦ぽんぽこ」(高畑勲原作・監督・脚本。ニュータウン建設で住処を追われる狸たちが「化け学」で人間に立ち向かう姿を描く。)、1995年の「耳をすませば」(少36 ファイナンス 2020 Oct.SPOT

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