ファイナンス 2020年10月号 No.659
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1令和3年度予算を取り巻く環境と概算要求の具体的な方針日本の財政は、少子高齢化に伴う財政の悪化という構造的な課題に直面している。社会保障制度の受益と負担のアンバランスを正すため、着実に改革を進めていかなければならない状況にある。一方で、経済面についても、人口減少・少子高齢化の進行、生産性と成長力の伸び悩みなど、数多くの課題への対応が求められている。こういった状況を踏まえれば、これまでの改革努力を継続・強化し、経済成長と持続可能な財政を両立させることが急務である。さらに、新たな課題として現れたのが、現在も世界の経済社会に甚大な影響をもたらしている新型コロナウイルス感染症への対応である。感染拡大の防止を徹底しながら、事業と雇用・生活を守り抜いていくため、令和2年4月から6月にかけて、政府として、2度にわたる令和2年度補正予算を編成し、事業規模230兆円を超える対策を講じた。この迅速かつ適切な執行をはじめ、新型コロナウイルス感染症への対応は喫緊の課題であるし、令和3年度における予算をはじめとする対応について概算要求段階で十分に予見することも困難であると考えられた。このような状況を踏まえ、令和3年度予算については、ここ数年とは異なる仕組みで概算要求を行うこととなった。政府、与党、地方など多くの関係者の作業の負担を極力減らすという観点も踏まえ、令和3年度概算要求の要求期限を例年よりも1か月遅らせて9月30日とすることとし、また、概算要求の段階で予算額を決めることはせず、その仕組みや手続きを簡素なものとすることとされ、その旨が、令和2年7月21日の閣議において、麻生財務大臣から明らかにされた。その際、令和3年度概算要求における要求、要望等について以下のような具体的方針が示された。(1)要求額は、基本的に、対前年度同額とする。(2)その上で、新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費については、別途、所要の要望を行うことができることとする。(3)要望を行う際には、これまでの安倍内閣の歳出改革の取組を強化するとともに、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化する。(4)年金・医療等に係る経費の高齢化等に伴ういわゆる自然増、SACO・米軍再編関係経費、厚生年金保険事業に係る国庫負担の繰入れに必要な経費、社会保障の充実等の平年度化に伴う対前年度からの増加の取扱い等については、予算編成過程で検討することとする。このように、令和3年度概算要求については、新型コロナウイルス感染症の発生という特殊な事情を踏まえ、前年度までのように閣議了解された「概算要求に当たっての基本的な方針」に拠るのではなく、財務大臣によって示された上記方針を踏まえて概算要求が行われることとなった。2要求・要望のとりまとめ結果上記の方針を踏まえ、期限である9月末日までに各府省から提出された令和3年度一般会計概算要求・要望は、(表1)に示したとおりである。一般会計の基礎的財政収支対象経費に係る概算要求額は77兆9,952億円であり、これに国債費25兆4,934億円を加えた一般会計の概算要求額は、103兆4,886億円となった。この他、要望に関しては、金額を示しての合計1兆9,185億円の要望がなされるとともに、金額を示さな令和3年度予算の 概算要求について主計局総務課主計官 中島 朗洋10 ファイナンス 2020 Oct.SPOT

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