ファイナンス 2020年9月号 No.658
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仙台2地下鉄東西線の開業東西線は、市南西部の八木山動物公園駅から東北大学キャンパス内に位置する青葉山駅を経由し、市中心部を抜けて、市東部の仙台港に近い荒井駅までの13.9キロメートルを走る路線で、13の駅を所要26分で結んでいます。山から街を抜け海へとつながる路線は、曲線区間が連続していることと高低差が大きいことが特徴で、広瀬川橋りょうと青葉山駅間には約100mもの高低差があり、八木山動物公園駅(西の始点)は標高が136メートルと地下にある地下鉄駅としては日本一高い場所にあります。急勾配に対応するため、車両には都営大江戸線や横浜市グリーンラインなどでも使われているリニアモーター式車両が使われています。モーターが平らな分、車体の高さを低く抑えており、トンネル断面を小さくできたことで建設コストの削減につながりました。また、車両デザインでは、正面に伊達政宗公が使っていた兜の三日月形の前立をあしらい、仙台らしさが表現されています。地下鉄東西線車両外観事業主体仙台市交通局事業内容仙台市高速鉄道東西線建設事業総事業費2,327億円(2003~2018年度)財政融資資金貸付額711億円主に郊外部での団地開発等に伴った通勤通学による渋滞緩和を目的に整備された南北線に対し、東西線は、住宅地や大学、観光地、商業・業務地域など多様な機能、特性を持った地区をつなぎ、新たな都市活動、交流を創出することを大きな目的に整備されました。東西線沿線を具体的に見てみると、西部の青葉山地区は、大規模会議場を備えた仙台国際センターや仙台市博物館、宮城県美術館などが立地しているとともに、東北大学の新たなキャンパス整備によって、工学・薬学・農学・理学等の研究科や、国際集積エレクトロニクス研究開発センターなど多くの研究機関が集積し、国際学術文化交流拠点を形成しています。一方、東部地域には、仙台市の産業を支える工業団地や流通団地が立地しているほか、荒井地区には新たな市街地が形成され、住宅や商業施設の立地が進んでいます。3次世代放射光施設の整備2018年7月、文部科学省は「次世代放射光施設」を青葉山エリアの東北大学青葉山新キャンパスに設置することを決定し、一般財団法人光科学イノベーションセンターが整備・運用主体となり、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会の4者が支援する枠組みで、2023年度の運用開始に向けた整備が進められています。施設を利用した本格的な産学官連携の実施と効果的な人材育成が期待できることに加え、最寄り駅の東西線青葉山駅が仙台駅から約9分、東京からの所要時間が2時間以内という高いアクセス性を有していることが設置決定の決め手となりました。次世代放射光施設と東北大学・青葉山新キャンパス放射光施設は「巨大な顕微鏡」と呼ばれ、光速近くまで加速された電子を磁場で曲げた際に発生する太陽光の10億倍という極めて明るい光(X線)を利用して、あらゆる物質を原子レベルで観察することができます。現在国内には、代表的な施設として理化学研究所のスプリング8(兵庫県)があり、施設を利用した80 ファイナンス 2020 Sep.連載各地の話題

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