ファイナンス 2020年9月号 No.658
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各地の話題1糸島市の概要糸島市は福岡県の最西端に位置し、北は玄界灘に面した美しい海岸線が広がり、南は背振山系の山々が連なります。中央部には糸島平野と呼ばれるなだらかな田園地帯が広がり、JR筑肥線と国道202号沿線を中心に市街地が形成されています。福岡市中心部から電車、車ともに約30分の距離で、福岡空港にも直通でアクセスでき、田舎の要素を備えつつ、都市の利便性も高い地域です。人口は約10万人で、高齢化率は25%を超え、他の地域と同様に少子高齢化の問題は深刻ですが、観光客や移住者が増えている全国的にも稀な自治体です。2糸島産ブランド食材福岡市という大消費地に隣接しながら、豊かな自然と豊富な食材に満ち溢れた糸島市。このような地の利を活かして、糸島野菜、糸島豚のほか、日本一の漁獲量を誇る天然真鯛や、海と山の栄養たっぷりの海水で育つ糸島牡蠣などの糸島産ブランド食材を都市部の消費者に供給できるだけでなく、体験する(食べる・味わう)場があることが当地の強みであり、多くの観光客や移住者を引き付ける要因の一つともなっています。これらのブランド食材は、住民や観光客だけでなく、食のプロのニーズにも応え得る多種多量の品揃えがなされており、市内に18か所もある産直施設などで販売されています。中でもJA糸島が運営する「伊い都と菜さい彩さい」は、年間135万人が訪れ、産直施設としては日本一の売上額(40億円超)を誇ります。また、漁師が養殖した牡蠣を漁港内の牡蠣小屋で提供する光景は、今や年間50万人以上が訪れる福岡の冬の風物詩となっています。実際に福岡都市圏17市町のデータを比較してみると、福岡市など16市町の農林業産品移輸出入収支額はマイナス収支となっている中、糸島市だけはプラス収支になっています。さらに農業生産額の市場シェアを他市町と比較をすると圧倒的にシェアが高いことがわかります。0.0-2.0-4.0-6.02.04.06.08.010.012.050.040.030.020.010.00.0(シェア率%)平均シェア6.3那珂川市筑紫野市福津市宗像市糸島市福岡市(成長率%)福岡都市圏における糸島市の市場成長率・市場シェア(バブルサイズは農業生産額の大きさを表す)3マーケティングモデルの推進糸島ブランドの浸透とともに、糸島産の食材は福岡市内の飲食店でも目にする機会が多くなり、雑誌やテレビなどのメディアにも観光地や移住先として「糸データで考える 地方創生戦略糸島市企画部経営戦略課 主任主査岡 祐輔糸島休日は5000人以上が訪れる伊都菜彩 ファイナンス 2020 Sep.77連載各地の話題

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