ファイナンス 2020年9月号 No.658
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り、オーストリア政府によるオーストリア航空に対する支援においても、CO2排出量の削減のため、鉄道に代替する短距離路線の削減、機体の燃料効率の向上などを求めた。仏政府は2020年6月9日、危機に陥った企業を支援及び雇用を維持すること、中小・中堅企業の近代化、脱炭素化へ向けた航空機の研究開発などを軸とした、エールフランス-KLMに対する支援を含めた総額150億ユーロ規模の航空業界向けの支援策を発表し、航空業界の復興だけでなく、グリーン化やデジタル化などの取組みを掛け合わせた政策を打ち出した。ル・メール仏経済・財務省はラジオ番組で「私はこの危機を、我々が経済に対し求めるものを再定義し、環境に配慮したものに置き換える契機になると考えている。」と述べるなど、仏政府としてポストコロナを見据えた姿勢を示ている。5.終わりに新型コロナウイルスは航空業界に対し大きな打撃を与え、各国政府は航空会社を支えるため様々な支援を行い、それらの中には今般の危機をきっかけとした新たな成長へ向けた取組みを結び付ける動きもある。またポストコロナの航空業界のあり方については、新型コロナウイルス発生以前と大きく変わることになるだろう。コロナ禍のビジネスにおいてはオンライン会議が増え、国外への出張頻度は減少し、これが常態化すれば今後ビジネス需要がさらに減少すると思われる。観光需要の割合が増加し、特に国内旅行が増えると想定でき、家族利用などに重点を置いたサービスが求められるかもしれない。新型コロナウイルスの影響は未だ先が見通せない状況であるが、復興へ向けた取組みの中で各国政府による支援を活用しつつ、持続可能な経済と社会への移行を目指し、新たな未来へ向けた航空業界の成長戦略が求められている。感染拡大が収束し、航空業界が新たな成長軌道に乗り、以前のように気兼ねなく海外旅行ができる日を筆者は楽しみにしている。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2020 Sep.61コラム 海外経済の潮流 129連載海外経済の 潮流

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