ファイナンス 2020年9月号 No.658
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4月にサービスを終了した。以上のように多くの米国の航空会社が甚大な打撃を受けているところ、新型コロナウイルス対策の救済法案(CARES Act)が2020年3月27日米国連邦議会で可決され、この中で航空産業を支える制度として、給与支払支援プログラム及び融資プログラムが措置された。給与支払支援プログラムは、航空業界の雇用を維持するため、賃金支払に充当することを条件に、政府が資金援助を行う制度であり、4月20日を第一回目の支払日として開始された。対策規模は旅客航空企業向けでは250億ドル、貨物航空企業向けに40億ドル、航空関連企業向けに30億ドルが上限となり、企業ごとの支援金額が一定額を超える場合は、支援金額の30%が返済の必要な融資の形となり、また融資金額の10%相当分の新株予約権等を財務省に対し提供する必要がある。航空大手3社に対する支援状況は以下の通りとなっている。【図表3】米主要航空3社に対する給与支払支援プログラムの支援状況総額うち資金援助うち融資アメリカン航空約58億ドル約41億ドル約17億ドルデルタ航空約54億ドル約38億ドル約16億ドルユナイテッド航空約50億ドル約35億ドル約15億ドル(出所)米国財務省融資プログラムにおいては、感染拡大の影響を受けた産業への幅広い用途における支援として、政府が融資や融資保証を行う制度である。航空産業向けの対策規模としては、旅客航空企業向けが250億ドル、貨物航空企業向けが40億ドルとなっており、新株予約権等を財務省に対し提供する必要がある。支援状況としては、財務省は7月2日にアメリカン航空を含む計5社、7月7日にはユナイテッド航空やデルタ航空を含む計5社と支援を行うことに合意したと発表された。いずれの支援プログラムも、雇用について2020年3月24日時点の水準を、2020年9月末まで維持することが求められている。(2)ドイツEUでは2020年3月17日、EU及びシェンゲン協定*1域外からの不要不急の渡航制限についてEU加盟各国*1) EU加盟国及びEFTA加盟国間において原則出入国検査なしに自由に往来できるもの。間で合意され、欧州各国で入国制限措置が講じられた。ドイツのルフトハンザドイツ航空では、感染拡大対策として、ドイツ発のエコノミークラスクラス等で座席の間隔を空ける措置の導入や、マスク着用の義務化を発表した。3月6日には今後数週間で運航便数を最大50%減らすことを公表し、同月11日には3月29日から4月24日の間において、グループ全体で合計2万3千便の欠航を発表した。また、6月15日には2万2千人の従業員が余剰となっていると発表した。旅客需要の減少に伴い、保有機体数の削減や、旅客機を貨物機に改修し貨物需要増へ対応を図ったりしながらも、2020年第1四半期決算では21億ユーロの赤字(前年同期は3億ユーロの赤字)となった。ドイツでは、主な企業支援策として、政策金融機関(復興金融公庫:KfW)を通じた融資や、資本強化等のための経済安定化基金の設置などを行っている。ルフトハンザは3月中旬に、ドイツ連邦政府等に対し資金支援を要請しており、5月25日にはドイツ連邦政府と以下の支援内容で合意に至った。【図表4】ルフトハンザに対する資金支援総額内訳概要90億ユーロ47億ユーロ経済安定化基金による議決権なしの資本参加。(IFRS基準で出資と認識されるもの)※配当は、2020年・21年は4%、その後の年は上昇し、2027年に9.5%3億ユーロ経済安定化基金による増資。株式資本の20%を取得(議決権制限株式)。10億ユーロ経済安定化基金による議決権なしの資本参加。特定の条件において株式(最低5%)に転換可能。※会社が買収の対象となるような場合や、上記47億ユーロの資本に対する配当が支払われない場合30億ユーロ復興金融公庫と民間銀行の協調融資(期間3年)。(うち、6億ユーロは、民間銀行)(出所)連邦経済エネルギー省、ルフトハンザEUではEU域内市場での競争が歪められないことを確保するため、加盟国による国内事業者への補助を規制しているところ(国家補助規制)、ドイツ連邦政府と合意した上記の支援パッケージは欧州委員会の承認が必要であった。5月30日には取締役会でフランクフルト及びミュンヘンの空港それぞれにおける発着枠の一部を1年半競合他社に譲るという、欧州委員会による支援承認の条件を受け入れる事を決定し、6月25日には欧州委員会により承認。同日臨時株主総会でも可決され、支援が行われることとなった。 ファイナンス 2020 Sep.59コラム 海外経済の潮流 129連載海外経済の 潮流

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