ファイナンス 2020年9月号 No.658
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コラム 海外経済の潮流129大臣官房総合政策課 海外経済調査係 時永 和明コロナ禍での航空業界とその後1. 新型コロナウイルスの航空業界への影響2019年11月に中国武漢から感染が広まったとされる、新型コロナウイルス感染症が経済に与えた影響は実に様々である。感染が拡大するにつれ、世界各国で導入された水際対策としての入国制限措置により、多くの航空会社は深刻な打撃を受けている。IATA(国際航空運送協会)によれば、2020年4月及び5月の世界の航空需要は、有償旅客キロ(RPK:Revenue Passenger-Kilometers(有償旅客数×輸送距離))で見ると、それぞれ前年同月比▲94.3%及び同▲91.3%となり、著しく減少していることが分かる。世界各国では苦境に立たされる航空会社に関する報道が相次いでおり、人員削減や経営破綻などに追い込まれた企業や、各国政府による資金支援を受け立て直しを図る企業も報道されている。以下の表は世界各国の航空会社における有償旅客キロの上位10社を表にしたものであるが、米国大手が上位3位を占め、欧州、中国勢が続いている。各国の航空会社の状況を見ていくにあたり、ランキング上位に中国やアラブ首長国連邦の航空会社も見られるが、今回は米国及び欧州の主要な航空会社に焦点を当てて、新型コロナウイルスによる影響と、それに対する政府支援の概要についてみていく。【図表1】有償旅客キロ(RPK)ランキング(2018年)エアライン名有償旅客キロ(百万キロ)国1アメリカン航空372,015米国2ユナイテッド航空370,319米国3デルタ航空362,489米国4エミレーツ航空299,967アラブ首長国連邦5ルフトハンザ284,410ドイツ6IAG270,657英国7中国南方航空259,194中国8エールフランス-KLM255,406フランス9中国国際航空220,728中国10サウスウェスト航空214,508米国(注)RPK(有償旅客キロ)=有償旅客数×輸送距離(出所)(一財)日本航空機開発協会2.各国の航空会社の状況(1)米国米国では、2月2日から入国制限措置を開始し、過去14日間に中国に滞在歴がある外国人の入国を停止した。3月13日には欧州の大半の国も入国制限措置の対象となり、その後措置の対象となる国の拡大を行った。米国の主要航空会社3社を見ると、旅客輸送量の減少を受けて2020年第1四半期決算において、アメリカン航空は22億ドルの赤字(前年同期は1.9億ドルの黒字)、ユナイテッド航空は17億ドルの赤字(前年同期は2.9億ドルの黒字)、デルタ航空は5.3億ドルの赤字(前年同期は7.3億ドルの黒字)となり、第2四半期決算においても上記3社それぞれ21億ドルの赤字、16億ドルの赤字、57億ドルの赤字となった。【図表2】米主要航空3社の四半期ごとの純損益の推移-70-60-50-40-30-20-1001020ⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ202020192018(出所)ブルームバーグ(億米ドル)アメリカン航空ユナイテッド航空デルタ航空ユナイテッド航空では7月8日、3万6千人(全従業員の約4割)の人員削減を行う可能性について社内通知を行い、アメリカン航空では7月15日、2万5千人(全従業員の約2割)の削減の可能性について社内通知を行った。また、トランス・ステイツ航空やコンパス・エアラインは新型コロナウイルスを原因として58 ファイナンス 2020 Sep.連載海外経済の 潮流

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