ファイナンス 2020年9月号 No.658
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巻頭言ユニコーンベンチャーが目指す、持続可能な社会に向けた素材開発、資源循環モデル株式会社TBM代表取締役CEO山﨑 敦義日本は人口減少の傾向にありますが、世界に目を向ければ人口増加が進み、それに伴う途上国の経済成長により、資源・エネルギー・食料需要の増大、廃棄物量の増加、環境問題の深刻化が懸念されています。例えば、欧州では有害な海洋プラスチックごみ削減のため、使い捨てプラスチック10品目と漁具を対象とした規制を採択し、アジアやアフリカでもレジ袋の有料化やストローの販売禁止に取り組む国が増えています。直近では、世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、プラスチックの消費量が増大し、改めてプラスチック問題へのアプローチが問われています。弊社は、石灰石を主原料としたプラスチックや紙の代替となる複合素材「LIMEX(ライメックス)」を、ストーンペーパーとは異なる自社の独自技術により開発しました。LIMEX製品は、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)やG20大阪サミットの備品として導入される他、大手企業の袋製品や印刷物など、プラスチックの代替製品として国内約5,000社以上でご利用いただいています。LIMEXの主原料である石灰石は、世界中に豊富に存在して安価に調達ができ、国内でも100%自給自足可能な鉱物資源です。従来の石油由来プラスチックに比べて、焼却時のCO2の排出量も抑えることができます。セメントや鉄骨、紙の塗工材など、用途が限定的だった石灰石を有効活用することで、枯渇リスクの高い石油や、紙の製造に必要な水や森林の保全に貢献が可能です。また石灰石は無機物であるため経年変化に強く、LIMEXは石油由来のプラスチックと比較してリサイクル時の物性低下率を抑えてマテリアルリサイクルが可能です。すでに企業や自治体(神奈川県、鯖江市など)と連携し、LIMEXによる循環モデルの構築に着手しています。今、世界では大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済モデルから、資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を図る循環経済モデル(サーキュラー・エコノミー)へのシフトが求められています。先日、新たな弊社の取り組みとして立ち上げた、再生材料を50%以上含む素材「CirculeX(サーキュレックス)」もそうした背景から開発しました。今後、使用済みのLIMEXだけでなく、世界中に溢れる廃プラスチックも貴重な資源として最大限に活用し、資源の価値を持続的に再生、再生利用し続ける仕組みづくりを目指していきます。最後に、多くの企業が、SDGsや環境問題への貢献をテーマにした取組が活発になり、株式市場においてもESG投資の高まってきており、「サステナビリティ(持続可能性)に貢献できる事業か」が問われています。私は、資源循環モデルを推進する上での技術や価値観、仕組みづくりに関して、日本は世界でトップクラスの気質や経験知を備えていると自負しています。それは、古紙やプラスチックごみの高い回収率にも表れていますし、時間に正確な鉄道運行や、お客様を待たせない迅速な新幹線清掃など、世界から奇跡と言われる、日本の当たり前の要素が数多く存在します。私たちは素材ベンチャーという立場から様々な企業や自治体、政府機関との連携を深め、グローバルでの持続可能な社会づくりの実現に向けて、エコロジーとエコノミーの共存を追求しながら尽力を重ねて参ります。Times Bridge Management、進みたい未来へ橋を架けよう。ファイナンス 2020 Sep.1財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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